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泉絵師 遙夏
泉絵師 遙夏
novelistID. 42743
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電脳マーメイド

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 エレノアが叫んでいる。
 悲痛の叫びを上げている。
 人は死んでもなお、心は残るんだろうか。
 それとも生きた肉体がある限り、魂も残るのか。
 私はライラ。
 エレノア、あなたはもう死んだのよ。
 自ら望んで死んだんじゃないの?
 私はライラ。
 エレノアはもういないのよ。
 だから、私たちの邪魔をしないで。
 私には、健一朗しかいないの。
 彼と一緒に生きていくって決めたの――

 目覚めると、汗びっしょりだった。
 夢の中で、エレノアが援けを求めていた。
 エレノアは、あの時に死んだはず。
 なのに、どうして今になって……
 私はベッドから起き上がった。
 隣では彼が、安らかな寝息を立てている。
 そっとベッドから抜け出してテーブルの上に置きっ放しになっている煙草のパッケージから一本抜き取る。
 ベランダへ出て煙草に火を点けた。
 少し吸っただけで咳き込んでしまう。
 どうして、煙草なんか吸おうと思ったのだろう。
 エレノアは煙草を吸っていたのだろうか。
 私は黙って煙草が短くなるのを見ている。
 それはあたかも私に残された時間を暗示しているようだった。
 駄目よ、エレノア。
 彼は私のものなんだから。
 私たちの邪魔をしないで。

 寝るのが恐ろしかった。
 もし起きた時、私が私でなかったら?
 エレノアにこの身体を取り戻されていたら?
 そんなこと、許さない。
 あなたは自分の身体を棄てたのよ。
 それを拾ったのが私。
 今さら返せというのは無茶よ。
作品名:電脳マーメイド 作家名:泉絵師 遙夏