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泉絵師 遙夏
泉絵師 遙夏
novelistID. 42743
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電脳マーメイド

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 いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
 気がつくとベッドに横たえられていた。
 彼が心配そうに私を見降ろしている。
「ごめんなさい。うっかり寝てしまってました」
「……」
「どうか、しましたか?」
「いや、寝てしまったというより、意識を失っていたと言った方が……」
「そうなんですか?」
「だって、倒れ込んでも目を覚まさないなんて……」
「ごめんなさい。ちょっと酔っぱらっちゃったみたいです」
 私は起き上がろうとする。でも、腕に力が入らない。
「無理せず、今日はもう寝てください。私ももう、切り上げますから」
「私のせいで、そんな……」
「ライラのせいじゃないです」
 彼が、私を支えて座らせてくれる。
「ひょっとしたら、軽い脱水症状かも知れません」
 彼は冷蔵庫から水を出し、グラスに注いで私に寄こしてくれる。
「ありがとうございます」
 私はグラスを受け取り、一息に飲み干した。
「もう一杯、いりますか?」
「いえ、もういいです」
 彼はコンピュータの電源を落とし、部屋の電気を消そうとする。
「真っ暗にしないでください」
 彼は玄関の電気だけを点けて、部屋の明かりを消し、ベッドに潜り込む。
 しばらく、私は仰向けのまま白い天井を眺めていた。
「健一朗さん」
「何です?」
「……」
 言おうか言うまいか、しばし逡巡する。
「どうかしましたか?」
「もし……」
 私は口を開いた。「もしですよ。急に私がいなくなったら、どうしますか?」
「何かあったのですか? 急に国に帰らなければならなくなったとか?」
「ううん、そんなことじゃなくて」
「じゃあ、どんな理由で?」
「……」
 どう言ったらよいものか悩む。
 私はさっき、倒れている間に夢を見た。エレノアが誰かを呼んでいる夢。信じられないけれど、エレノアの意識が蘇ったかのような。
「私は、ずっとあなたと、こうしていたい」
「大丈夫ですよ。久しぶりに外に出たんで、疲れただけですよ」
「そう……ですよね」
「さあ、もう安心してお寝みなさい」
「はい、おやすみなさい――健一朗さん」
作品名:電脳マーメイド 作家名:泉絵師 遙夏