小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
泉絵師 遙夏
泉絵師 遙夏
novelistID. 42743
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

黄昏クラブ

INDEX|4ページ/85ページ|

次のページ前のページ
 

 グラウンドの方から、ラグビー部の練習の掛け声が聞こえてくる。
「野球部とか庭球部は遅くまで残ってもいいのにね」
 それは、私も同感だったから、無言のまま頷いた。
「手を動かせ、体を動かせって、脳が働かないと、体も手も動かないのにね」
「うん……」
 少女の背に向かって、相槌を打つ。
 その後、しばらく彼女は何も語らなかった。
 そもそもが、ひとり言だったのかもしれないが、私はその間、鞄を下げたまま戸口に突っ立って逆光の少女を見ていた。
 はっきりとした日付までは定かではないが、それが私と彼女が出会った最初だった。
 覚えているのは、私が三浦綾子全集第五巻の『残像』を読んでいたこと、そして中間試験が終わった直後だったことだけだ。

「ふうん」
 真紀理が微妙に口を結ぶ。「帰宅しそこない部か」
「かもね」
 私は否定もしない。
「それで、その三浦綾子って人の小説って、面白いの?」
「面白いの意味にもよるけど、いいお話よ。読んで損はないわ」
「貸してくれるなら、読んであげてもいい」
「たぶん、あんたの学校の図書室にもあるはずよ」
「そうなんだ。じゃ、今度の読書感想文のネタにでもしようかな」
作品名:黄昏クラブ 作家名:泉絵師 遙夏