左端から見れば全部右寄り Part.3
4.横田滋さんの訃報に接して
もし、あなたが中世ヨーロッパ辺りを舞台にした映画を見ているとしましょう。
王女様「お願い、人質になっている兄を助けて」
主人公「わかりました、遺憾の意を伝えましょう」
王女様「助けに行ってはくれないの?」
主人公「わが国は専守防衛を自らに課していますから、兵は送れないのです」
王女様「軍事的に圧力をかけることも出来ないの?」
主人公「敵国は、わが国が現実的に兵を出せないことを良く知っているので、いくら脅しても圧力にはならないのです」
王女様「では手をこまねいて見ているだけなのですか?」
主人公「兵糧攻めを画策しましたが、反対側から支援する国もあるのです、ですがあの国の民は王の圧政に苦しんでいます、今は時を待ちましょう」
こんな映画、見たいですか?
王女様「お願い、人質になっている兄を助けて」
主人公「わかりました、直ちに兵を挙げましょう」
あるいは。
王女様「お願い、人質になっている兄を助けて」
主人公「わかりました、ですが、今兵を挙げると別の国に背後を衝かれるやもしれません、私が精鋭部隊を引き連れて参ります」
こう来なければ盛り上がりませんね。
こんな例えは不謹慎な気もするのですが、現実は最初の映画のパターンですよね。
日本人は強度の軍事アレルギーを持っていますので、映画なら戦闘場面や救出作戦をハラハラしながら見守ります。
ルーク・スカイウォーカーはデス・スターに原子炉にミサイルを撃ち込み爆破しましたが、それを野蛮な戦闘行為だと非難する声は寡聞にして聞きません。
ですが、現実は最初の盛り上がらない映画の展開を支持しているわけです。
精鋭部隊による救出作戦も王子がどこに幽閉されているかわからなければやりようがありませんし、現実の拉致被害者は多数存在していて、おそらくは各地に散らばっているでしょうから現実的には不可能です。
横田滋さんの訃報を受けて、安倍総理にその責任を問う向きがあります。
蓮池透さんなど『総理には救出する意思なんかさらさらない』とまでツイートしていますね。
でも、思い出してみてください、北朝鮮が拉致の事実を認め、5人の被害者が還って来たのは小泉政権時代、安倍総理が官房副長官を務めていた時のことです。
2002年に5人の帰国が実現した際も、北朝鮮との交渉ではあくまで「一時帰国」だったことから、北に戻せと主張する政治家もいました、それを阻止したのも安倍官房副長官でした。
安倍首相は拉致問題への取り組みで頭角を現した人です、拉致問題の解決は今でも悲願とされているでしょう。
昨日、横田早紀江さん、弟さんたちの記者会見がありましたね、お三方はいずれも当時の安倍官房副長官、現在の首相に対しては尽力に感謝こそすれ、対応の遅れや甘さを責める言葉はありませんでした、反対に審議を遅らせる野党、事実を正確に報じないマスコミへの苦言は述べられました。
滋さんがめぐみさんと再会できないままに亡くなったことを、安倍首相の責任・失点だとする野党やマスコミの批判は的外れだと、当時者たるご家族が断じられたわけです。
何でもかんでも『アベのせい』だとして、何とか首相から引きずり降ろそうとする向きを、ネットの保守派では『アベノセイダース』と呼んで批判しています。
滋さんの死すら政局に利用すしようとするのには卑しさしか感じません。
つまるところ、憲法が改正されない限り、拉致問題は金王朝の滅亡を待つしかないのです、仮に金一族が排除されたとしても、軍部の独裁体制が敷かれれば同じことかもしれません、だとしたら憲法改正しか道はありません。
私は、侵略戦争にはいかなる理由があろうとも反対します、しかし、現実世界で最後にものを言うのは『力』です、これは好む好まざるにかかわらず現実なのです。
何事も話し合いで解決できるのであれば武力は必要ありません、ですが現実はそうではありません。
もし本当に話し合いですべてが解決できるならば、地球上のいかなる国も軍事費などと言う必要悪に予算をつぎ込むことはさっさとやめると思いませんか?
日本国憲法第9条の精神は立派だと思いますが、地球上のすべての国が同じ憲法を掲げない限り、単なる理想論でしかありません。
現実には巨額の税金が軍事に注ぎ込まれています、防衛のためだけでなく、侵略も視野に入れて。
もちろん『力』は軍事力だけではないでしょう、経済力も現実的な力です。
ですが、いくら経済的に力を持っていたとしても、軍事力による侵攻に抗する力がなければ何もなりません、どうにも窮したら奪えば良いだけのことですから、それが現実なのです。
日本は大東亜戦争終結後75年間にわたって内戦すら経験していません、日本人にとって戦争は現実感がないのも仕方がないことなのかもしれません。
ですが、香港を見て下さい、『国家安全法制』とやらで自由を奪われようとしています。
中国共産党が侵略するのは今回が初めてではありません、東トルキスタン、チベット、内モンゴルと侵略して来た事実があります。
中共はそれを『解放』と言い換えます、『資本主義の毒に犯された人民を解放してやった』のだと言いたいらしいですが、もし本当に『解放』されたのなら『フリー・チベット』なんて運動は起こりませんよね。
日本がいつまでたっても拉致被害者を取り戻せないことは、『力』を行使できないからです、実際に行使するするかどうかではありません、『どうしても返さないならば力づくで行くぞ』と言う脅しすら出来ない状態なのです。
拉致被害者を取り返せないと言う現実、それは領土を奪われても奪還できない、著しく国益を損なわれても阻止できないと言うことと同義です。
現実に、尖閣と竹島は奪われかけています。
更に、中国は南沙諸島に軍事基地を建設しています、完成すればいつでも中東から日本へのタンカーが航行するルートを遮断できます、日本に石油が来ない……それは産業や国民生活を損なうだけではないのです。
石油がなければ自衛隊は動けません、在日米軍も動けなくなります。
中国は明らかにそれを画策しています、いざ事を起こせば直ちに石油を遮断できるようにしているのです、私はそう確信しています。
それでも話し合いに賭けますか?
作品名:左端から見れば全部右寄り Part.3 作家名:ST