左端から見れば全部右寄り Part.3
3.アメリカの暴動について
トランプ氏が大統領選に勝利した時は『大丈夫なのか?』と思いましたが、その後の政策を見るにつけ、『ヒラリー女史でなくて良かった』と思っています。
そして、今、そのトランプ降ろしが酷いようです。
黒人男性を、警察官が過度の制圧で死亡させたとして、アメリカ各地で暴動・略奪が起きています、トランプ大統領はそれに対して軍の出動も辞さない考えを示しました。
もちろん、自国民に軍が銃を向けると言うのは異常な事態です。
しかしながら、暴動・略奪は許される行為でしょうか? 映像など見る限り、相当ひどい状態で、火の海になった街の様子を写した画像も目にします。
大統領だって軍を出さずに済むならそうしたいと考えていると思いますよ、軍が自国民に銃を向ける映像なんか流れた日には、秋の大統領選に向けてマイナスイメージが付きますからね。
しかし大統領と言う立場にあれば、暴動を鎮めなければならないのも確かなことです。
ほっとけ、なんて考える人はいないでしょう、いや、『アメリカなんて滅びれば良い』と思っている人以外は。
『自国民に銃を向けるな』と言うのは簡単です、でもそう言うからには平和裏に解決できる目算があるんでしょうね? 何か目からウロコの妙案が。
そうでなければどこかの国の野党議員みたいですね、批判はするけれど対案はない。
そして、これはアメリカでもほとんど報道されていないらしいですが、亡くなった黒人男性・ジョージ・フロイド氏には、強盗、脅迫、薬物使用など複数の前科があるそうで、あの事件の際もニセ札使用の容疑で職質したところ逃亡を図ったので逮捕しようとし、抵抗したので制圧したと言うことです、報道された画像を見ただけだと、交通違反で捕まる際に暴行を受けたように見えてしまいますが。
確かに死亡してしまうほどの制圧は行き過ぎかも知れません、ですが、銃がはびこるアメリカ社会、警察官も自分の身は守らなければなりませんよね。
フロイド氏の抵抗がどの程度のものであったのか、警官の行動に行き過ぎはなかったのか、それを検証するのは大事なことだと思います、ですがその詳細は一向に伝わって来ません、伝えられるのは、黒人の市民が白人の警官によって死亡させられたと言うことだけ。
それはもちろん事実ですが、背景は全く不問と言うのはおかしいでしょう? これは私の憶測ですが、過去に何度も禁固刑を受けていた人物が、新たな罪で逮捕されそうになったら相当に抵抗するんじゃないでしょうか? そして警官は彼が過去に強盗を行ったことがあり、薬物を使用している可能性もあると知っています、それで良いとは言いませんが、力が入り過ぎてしまう気持ちはわからないでもありません、ですから、そのあたりは不問と言うのは納得いきません。
大統領選の対立候補であるバイデン氏は『大統領の判断は分断を助長するものだ』と批判しています、そう言うからには、バイデン氏は暴徒の矢面に立って説得に当たってもらいたいものです。
それをやらないのであれば、バイデン氏は暴動の制圧を人種差別問題にすり替えていると言わざるを得ませんよね。
トランプ氏の前任者はオバマ氏、言わずと知れた初めての黒人大統領です。
このことでアメリカの人種差別がなくなったと考えるのは早計です、レストランに『白人専用』と張り紙があるような、あからさまな差別はなくなったのでしょうが、今でも黒人が良い職にありつける可能性は低いようです。
まだまだ根深い問題なのだろうと思います。
少し話は逸れますが、数年前、人種差別問題とされた事件がありました。
白人のインコグニート選手が黒人のマーティン選手(正確には父親が白人、母親が黒人のハーフ)に嫌がらせを繰り返し、黒人選手は精神的打撃を受けて退団した、と言うものです。
これも表面的に見れば差別問題です。
ですが、マーティンは、父親が大学教授、母親がトヨタの顧問弁護士と言う家庭に生まれ、実家はビバリーヒルス、自身はスタンフォード大学卒。
いじめの首謀者とされるインコグニートはスラム街の生まれ、フットボールの実力だけを頼りに、高校、大学、そしてプロへと登り詰めた苦労人で、チームメイトの黒人選手から『名誉黒人』の称号を与えられていた人物、そしてどちらも5人で構成されるオフェンシブラインと言うポジションの選手で、インコグニートは一番のベテランでオフェンシブラインのリーダー的役割を担っていました。
恵まれた環境で育って来た『半黒人』のマーティンに対する黒人選手たちの感情はあまり良くなかったようです、『お前がいるとポジションが一つ減る、お前はフットボールなんかやらなくたっていくらでも良い職にあるつけるだろうに』と言うわけです、そして、マーティンは素質には恵まれていましたが、坊っちゃん育ちのせいか甘い所がある、インコグニートは彼を指導しなくてはならない立場にあり、黒人選手からの突き上げも食っていたのです。
その背景を知れば、人種差別ではなく、単にポジション争いの話のように思えます。
ひとつ付け加えるならば、インコグニートと言う姓は『姓名不詳』の意味です、彼の先祖がアメリカに渡って来た時、入管で自分の名前すら書けなかったことに由来するものです。
もう一つ別な話。
ホイットニー・ヒューストンと言えば80年代を代表する黒人女性シンガーですが、黒人の間ではあまり評判が良くなかったそうです。
つまり、『白人好みの黒人』あるいは『白人に取り入った黒人』と見られていたと言うのです。
今でこそ、黒人音楽はソウルとかブラック・ミュージックと呼ばれますが、60年代には『レイス・ミュージック』と呼ばれていました、直訳すれば『人種音楽』ですね。
80年代頃から黒人音楽は白人にも受け入れられ始め、時を同じくして黒人の成功者もチラホラ現れました。
ですが、黒人の間では『白人好みの黒人がもてはやされているだけ』と思われていたようです、つまり『人種差別主義者ではないぞと言う白人のポーズに利用されているだけだ』と。
金ねん、彼女は薬物中毒で亡くなりましたが、同胞の冷たい視線が関係していなかったことを祈るばかりです。
ジャズドラマーの巨人、アート・ブレーキ―は大変な親日家で、『世界で私を人間として扱ってくれたのはアフリカと日本だけだ』と言う言葉を残しました。
これほどまでに人種差別問題とは根が深いものなのです、もちろんすべての白人が黒人を差別してるわけではありませんが、現実にはまだまだ根深いものがあるようです。
『ポリティカル・コレクト』と言う言葉があります。 言語表現や創作物、あらゆる社会制度から差別をなくすことを意味すると言うことですが、直訳すれば『政治的正解』ですよね。
ここで言う『差別』は人種差別に止まらず、男女差別、職業差別等、全てに当てはめられます。
差別してはいけない、と言うのは間違いなく『正解』だと思います、しかし、それをあまりに厳密に適用しようとすればどこかにひずみが出ます、そしてそれは次第に『触れてはいけないもの』になって行くわけです。
作品名:左端から見れば全部右寄り Part.3 作家名:ST