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左端から見れば全部右寄り Part.3

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1. 密室会議



「主席、皆さんお揃いです」
「ふむ……待たせてしまったかな?」
「いえ、時間ぴったりでございます」
「そうか……」
 主席が会議室に入ると重いドアがぴったりと閉められ、何重にも施錠された。
 壁、床、天井は分厚いコンクリートに囲まれ、窓はなく、更に電波を完全に遮断するシートも分厚く張られている、落ち着いた色調の板で仕上げられてはいるが、それ自体が要塞のような部屋だ。
 主席が座る席の後ろには大きく真っ赤な旗、その対面には国父の大きな肖像画が飾られている。
 主席が自席の前に立つと、六人のメンバーは深々と頭を下げた。
「では定期会議を始めようか」
 主席が着席するように身振りで促すと、メンバーはそれぞれ大きな黒い革張りの椅子に腰かけた。
「では、まず我々のウィルスの状況について報告を聞こうか」
「はい、依然として感染者数、死者数共に横ばいです」
「発表の方はどうなってる?」
「感染者は他の病気の名目で病院に収容しております、死者も同様で、他の病気での死亡と診断させております」
「医療の方は?」
「特になにも……点滴などの治療を施しているように見せておりますが、単なるブドウ糖です」
「それで良い、ウィルス感染から回復したなどと口外する者が多数いると、我々の発表が嘘だったと言うことになってしまうからな……」
「死人に口なしと申しますので」
「表現に気をつけたまえ、わが国は人民の健康に最大限の関心を寄せてあらゆる努力を惜しまないのではなかったかな?」
「申し訳ございません」
「この部屋の中でなら構わぬが、肝に銘じておかないと、つい外でも喋ってしまいかねないからな……スマホ大量解約が露見した時は肝を冷やしたぞ、報道管制の方はどうだ?」
「国内の報道に関してはこれまで通りに」
「厄介なのはネットだが……」
「検索ワードを強化しております、それと……」
「それと?」
「ツ〇ッター社に我らの同士を配しました」
「そうか、封じ込めは強化されたな」
「封じ込めだけではありません、ハッシュタグを操作して煽りの方も」
「なるほど、それは妙案だな、でかしたぞ」
「ありがとうございます」
「香港の方はどうなっている?」
「デモ隊は既に制圧しました、香港郊外に人〇解放軍も配属済みです」
「ふむ……対応はそれで良いが、実態を漏らしてはならん……が、スマホがこれだけ普及した今、完全に遮断することは難しいが……ANT〇FAはしっかり活動しておるのだろうな?」
「我々の予想以上です、アメ〇カ人はこらえ性がないので外出制限に不満が溜まっていたのでしょう、暴動、略奪が始まると堰が切れたように……」
「ふむ、その映像は私も見た、なかなか痛快だな、ト〇ンプに渋い顔は私にとっては眼福だ、奴の再選は何としても阻止しなければならん、引き続きソ〇スに資金援助して暴動を煽らせろ、報道の方にも手を回しておくように」
「抜かりはありません、三大ネットワークはもちろん、日本のN〇K、イギリスのB〇Cなどにも裏から通達を入れてあります、ト〇ンプが暴動を制圧にかかれば、相当にショッキングな映像が得られるでしょう、それを繰り返し流して奴が自国民に銃を向ける危険な男だと印象付ける様指示してあります、香港の実態が少々流出してもメディアに乗らなければわが党への批判は抑えられます、ネットの方もツ〇ッター社である程度操作可能かと」
「ふむ、完璧ではないが最善だな……世論のコントロールは重要だぞ、日本はどうなってる?」
「はい、『自国民に銃を向けるト〇ンプにわが国を批判する資格はない』と言う趣旨に沿っての報道を支持してあります、それとは別に」
「ほう、まだ何か手を打ってあるのか?」
「このところ、あの邪魔な政権を批判するネタが不足しておりますので、ク〇ド人を送り込みまして警察とひと悶着起こさせました、糸を引いたのはANT〇FAでして、我々に協力的な野党を支援させる手だても講じてあります」
「なかなか良いぞ、あの政治家たちは忠実だがどうも使えんからな、操り人形に使うくらいで丁度良い……使えない操り人形と言えば、テド〇スはどうしている?」
「相変わらず機転が利かない様子で……」
「うむ……奴の猿芝居のせいでW〇Oをわが国が牛耳っているのが露見してしまったからな……無能な働き者は始末が悪い」
「事務総長を交代させろと言う声も高まっています」
「そうだな、批判をかわすためにもW〇Oの顔は交代させた方が良いかも知れん」
「次の候補は数人居りますが、そのいずれにも手は廻してあります」
「おお、仕事が速いな」
「恐れ入ります」
「我々のウィルスを未完成のまま漏らしてしまった奴とは比べ物にならんな……あやつ、細菌兵器の開発に遅れを出しただけでなく、パンデミックまで引き起こしよって……」
「しかし、それを好機と捉える主席の機転には恐れ入ります」
「やむなく、だよ……だが、私の考えだけではない、偉大なる意志の御意向でもあるのだよ……偉大なるマオのな……」

 主席が手元のボタンを押すと、肖像画の目がギロリと動いた。
 肖像画と見えていたのはモニター、そしてその表情の主は……。
 建国以来全ての意思決定を最終的に下して来たAI……建国の父だけでなく、歴代の主席の頭脳がインプットされ、四千年の歴史にも精通している。

「偉大なるマオ……開戦の準備は着々と進めております、最終の意思決定を……」