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プルースト効果

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俺を乗せた電車が駅のホームに滑り込んで行く。やがて、車体をわずかにきしませながら、電車が停車した。
俺は他の大勢の乗客と共に、開いたドアから出てプラットフォームを歩き出す。
歩きながら、今日は高校2年の娘の澪の帰宅が遅いことを思い出していた。もうすぐ部活の大会が始まるため、今の時期は練習が長引くのだ。
5年前に妻の綾香が死んでからというもの、既に俺の両親も亡くなっており、一人っ子で頼れる親戚もおらず、俺と娘の二人きりになってしまった。娘は家事なんてほとんどできなかった俺と二人きりで、よく家のことをして助けてくれた。亡き妻がいろいろと娘に教えていてくれたおかげで、俺はずいぶん助かった。娘も、明るく真っ直ぐに育ってくれたと思う。娘がいなかったら、今頃俺はどんな生活をしていただろう。そう考えると、本当に娘には感謝している。
だから、こうして娘の帰宅が遅くなるときは、俺だってきちんとできることを、娘に見せてやらなければならない。
俺は改札を出ながら、家に着いてからやらなければならないことを、一つ一つ頭の中でリストアップした。
まず洗濯物を取り込んでたたみ、次に風呂の掃除をする。それから夕食の準備だ。冷蔵庫に鶏肉があったはずだから、ソテーにして、昨日娘が作った煮物がまだ残っているから、あとはサラダとみそ汁を作れば終わりだ。
俺はここまで考えて、何か足りないものがなかったか、思い出そうとした。
シャンプーはまだある。食器洗い用の洗剤もトイレットペーパーもキッチンペーパーもあるし、ティッシュは買い置きがある。トイレの洗剤が残り少なかったけれど、まだ大丈夫だろう。そうだ、風呂用の洗剤がもう無かった。
俺は思い出して良かったと思いながら、駅ビルの地下にあるスーパーマーケットに足を向けた。
早く家に帰って、部活の練習で疲れて帰って来る娘のために、食事の準備を整えておきたかった。
作品名:プルースト効果 作家名:sirius2014