I have a...
「この世にゃ不幸が満ち溢れてるのさ」
白ネコは言った。
「この世には幸福が満ち溢れているよ」
だから私は尋ねた。
「何故そう信じるの?」
黒ネコと白ネコは言う。
「この世には人間が居るからさ」
「そう、人間が居るからよ」
私は首を傾げた。
「何故人間が居ると不幸で、幸福になるの?」
黒ネコは自慢げに答えた。
「人間は自分の欲に正直で、ずる賢い生き物だからさ」
白ネコは自慢げに答えた。
「人間は本能に支配されない、自由な心を持った生き物だからだよ」
私はどっちも合ってそうで、間違ってそうだと思った。
「私は不幸で幸福だよ」
黒ネコは怪訝な顔をした。
「そりゃ嘘だね、不幸ならば幸福じゃないのさ」
白ネコは怪訝な顔をした。
「不幸だと言うのは嘘だよ、本当は幸福なのに気付いてないだけだよ」
やっぱり私はどっちも合ってるけど間違ってると思った。
「あなたたちが私を不幸だろうと幸福だろうと思おうと自由だよ、だけど私の幸せは私が決めるの」
黒ネコと白ネコは失望したような顔をして去っていった。
「自分の不幸に気付かない事が最大の不幸さ」
「幸福なのに自分を不幸だと思う事が最大の不幸だよ」
黒ネコと白ネコが去っていった私の心の部屋には、私だけが居た。
真っ白な部屋には所々落書きがある。
白い部屋の落書きはちっぽけで鮮やかだった。
私は部屋の隅っこに忘れ去られたように小さく書いてある、不器用で拙い文字を見つめた。
それは、私を暖かで明るく、切なくて苦しくさせた。
人間は眩しい太陽や暖かな闇だけでなく、時には蝋燭の火が必要なのだ。
やっぱり黒ネコと白ネコは間違っていたと思った。
作品名:I have a... 作家名:コーンのヒーロー