きみの見る世界【詩集6】
世界は数限りない色でできている
世界は黒か白だけではなく数限りない段階のグレーでできている。
本当は無彩色ではなく数限りない色に溢れている。
色、色、色
世界は無数の色でできている。
まだまだ捨てたもんじゃない
だから外に出て空を見て
空の青も木や草の緑も生き物たちも
数限りない色と果てしもないグラデーションに彩られている
晴れた日もあれば曇った日もある
小川の水に大河の波
あなたの肌の色、私の目の色
無数のグラデーションに彩られている
深呼吸して虹のようなたくさんの色たちを胸一杯に吸い込んで
世界を感じてみて
あなたはひとりじゃないし
世界は連続するグレーでできているわけじゃない
目と鼻と耳と肌とーーー感覚のすべてで生きている世界を感じて
今だけはすべてを忘れて
世界を感じて
世界を胸一杯に吸い込んで今生きていることを感じてみる
生まれてきて良かったと言う言葉が心に浮かぶ
でも心の別の部分は生まれてきて何が良かったのかと泣き叫ぶ
きれい事を言うなと
愛されなかった記憶が今も癒えない無数の傷が
暗闇の中で鮮やかに浮かび上がる
これが見えるか?誰にやられた?
お前はゴミのように扱われて満足なのか?
生きていると言えるのか?
本当に生まれてきて良かったと思うのか?
言ってみろよ、本当にことを
誰も聞いてないぞ、ここならば
心の奥にわだかまる黒よりも濃い闇が呼びかける
良いか良く聞け。俺だけが本当の味方だぞ。
お前はこれまでどれだけ痛めつけられて来たのか思い出せ。
世間の奴らはみんな嘘吐きだ。
何があなたのためだからだ。
俺の言うことだけが真実だ
他の奴らはみんな大嘘つきばかりさと吐きすてる
私はやつにそっと手を差し伸べた
冷たく硬いその手を取り、抱きしめた
・・・ずっと辛かったんだね。悲しくて痛かったんだ。
わかるよ、私もそうだったから。
やめろっ!と声は少し弱々しく叫んだ。
同情なんか要らない。お前も嘘吐きだ。どうせ奴らの仲間なんだ。
おれに触るんじゃない
語尾はかすかに震えて消える
後ずさりして闇に隠れようと
だめだ、離さないよと私は腕に力を込める
本当はずっと待ってたんだろうと
嫌だ!やめろ!ヤメロ、ヤメロ、ヤメローーー
真っ黒なそれはどろどろと溶け出していく
粘り着く真っ黒なヘドロが溶け流れ落ちて
地面につくなり蒸発するように音もなく消えた
やめて!やめて、もうほっといて・・・
後には幼子がひとり残された
ようやく物心つき始めたかと思しきちいさな子ども
やっと姿を見せてくれたね
優しく声をかけ、再び強く抱き締める
ずっとほったらかしてごめん、やっとあえたね
もう大丈夫だよ
そう言いながら柔らかく温もりのある身体をそっと抱き寄せる
もう誰にも邪魔はさせない
もう誰にも触れさせない
私が守るよ、この力で
私は大人だから力がある。心配しないで。
君をいじめるものから守ってあげる
二度と傷つけさせない
きみは私だけのものだよ、大切な
作品名:きみの見る世界【詩集6】 作家名:maki