北へふたり旅 1話~5話
「踏んだり蹴ったりだな、実習生も・・・。
となると手元に残るのは115万円。ずいぶん少なくなってきたなぁ」
「帰国するときの土産代も馬鹿になりません。
携帯電話やパソコンを買っていくと、30万から50万が消えてしまいます」
「なんだい。そうなると3年後の実習生に残るのは、50万から80万だ。
悲惨になってきたなぁ。
いったいなんのため、汗水たらして日本で働いたんだ」
「いまのケースは、恵まれた例です。
最低賃金以下の時給700円や、600円で働かされたケースもあります。
むしろ、そういう例のほうがおおいかもしれません」
「いろいろ問題になっているからね。
実習生をとりまく実態は」
「ベトナム出身の女性実習生が、厚生労働省へ手紙を書きました。
勤務時間は8時から5時、残業は5時半から9時半まで。
そのあとも仕事があり、そのときは服を手で縫います。
毎月の給与明細はありません。
わたしの基本給は6万円。
残業は時給400円。給料は月に12万円。
ベトナムでサインした契約書では、基本給は食費別で8万5,000円でしたが、
実際の給料は6万円です。
ベトナムの送り出し機関に電話したけれど、電話に出なかった。
ベトナムで契約した給料と違います。
監理団体からは「ベトナムの会社のことはわからない」と言われた。
道理にあわないので、この手紙を書きました。
氷山の一角です。こんな話は・・・」
(6)へつづく
作品名:北へふたり旅 1話~5話 作家名:落合順平