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楡原ぱんた
楡原ぱんた
novelistID. 10858
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バックドラフトする感情の制御は出来ない

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私の心には色んな部屋があり、中でも本音は地下室にあった。この部屋は対人用。あの部屋は家族用。そっちは恋人用。等々、使い分けできるように小さい頃から分別していた。本音は言わぬが花と考え、ゆえに地下室にずっと仕舞い込んでいた。
だけれども。
どうしても、あの女の前では使い分けが出来ない。今まではうっかりもなにも本音は殆ど地下室に上手くしまいこんでいれたのに。何故か、女の前ではうっかりもなにも漏れてしまう。
ひどく動揺して、さらにボロが出そうな私は瞬時に口を閉ざした。発さなければ、漏れもしない。安易な考えだ。しかしそれが最善の方法である。
しっかりと口を閉じ、さらに歯をくいしばる。別に悔しいわけではない。違うところに気をやらねばうっかりが出てしまうことを案じただけだ。これ以上は、地下室を開放したくない。それだけだった。
「あら、だんまり?」
煽っていることは明々白々。挑発に乗らず、無視をするのが良い。
「何がそんなに嫌なの? 私と喋ること?」
「藍海ちゃん」
常に一緒にいる小柄な女が、女を止めるように制服の裾を引っ張った。
「だってヤスキヨ、都合の悪いことにだんまりだなんて……ああ、黙秘権を行使というやつかしら。だいたい自分が悪いと言っているようなものよね?」
気に食わない。全くもって気に食わなかった。女の態度が。仕草が。全て。これは、嫉妬じゃない。生理的嫌悪だ。途端に金属音が耳の奥で響く。現実と私が膜に覆われて、とても、不快だ。
「あんまり歯を噛み締めると、」
「気持ち悪いんだよ。近寄るな、変人」
胸の奥底が熱く痛い。きっと開け放たれた地下室が燃え盛って喉を焼いて、焼き尽くそうとしている。

これはもう駄目だ。