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楡原ぱんた
楡原ぱんた
novelistID. 10858
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貢物は甘露で

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泰原 粋(やすはら きよ)の母親である夏陽子(かよこ)は教育自体はそうでもないが日常の過ごし方に厳しい。粋に対してもそうだが、父の影澄(かげずみ)にも適応される。
特に食事時だ。
食べる動作はさして咎められないが、味がどうのという会話はNGワードである。理由は悲しくなるから、らしい。美味しいなら美味しいだけがいいとのこと。不味いなら不味い。味の好みは人それぞれだから、食べ終わった後にテレビを見ながらの会話ならば聞く。意味がわからない。しかし作る側にとっては重大だ。モチベーションに関わる上に、作らない奴に何も言われたくない。もっともだ。粋は手伝うが、影澄は不器用で皿洗いすらまともにこなせない。かわりに掃除は得意なようで「適材適所でいこう」と結婚、同棲前の約束事だという。しかし生活基準は夏陽子が中心であるから、尻に敷かれているといっても過言ではない。彼女が「アレやって、コレやって」と言えば拒否はできないのである。もちろん、ご飯の良し悪しを言える立場ではない。うっかり苦手な食材があった日には、無言の食事になる。
「母さんにうっかり良し悪しを言おうものなら、最低でも三日間は口を聞いてくれないからなぁ」
新聞を読みながら、影澄が小さくぼやいた。どうやら前があるらしい。
「でも料理作ってくれるからね。優しいんだよ」
「そりゃあ作れないから仕方ないよね」
「うちの独裁者様は優しいから、今日も帰りに甘いもの買ってくるな」
実にいい笑顔で惚気られて、粋は苦笑した。
作品名:貢物は甘露で 作家名:楡原ぱんた