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楡原ぱんた
楡原ぱんた
novelistID. 10858
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第一志望もあくまで志望

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やれ受験だの何だのと、学校は忙しなく。受験の為に事前準備として塾に通ったり、家庭教師頼んだりと大変めんどくさい。休みの日には勉強しろと親は口うるさい。泰原 粋(やすはら きよ)は受験が始まるかなり前からうんざりしていた。だってそうだろう。どこへ行ってもそればかりだ。たしかに大事な人生のイベントだ。此処で将来は決まらないが、そのための布石なのだ。どうしたって周りは騒がしくなるに違いない。粋だとてそれぐらいはわかっているし理解している。理解できないのは数学の文章問題の引っ掛けだ。引っ掛けだとわかってもどの公式を当てはめるか分からなければ、意味ないだろう。そんな気分だ。どこの高校を受けるか決めていないうちから口やかましく言われても受け入れられない。第一志望とか第二志望とか同じで良くない? 良くないんだな。それぐらい。はぁ、とため息を漏らしても何もない。目の前には明日の宿題があって、シャープペンシルを利き手に携えて粋は近い将来を馳せた。
高校に行けたとして、やはりその先には大学受験がある。さらにその先には就職活動がある。これは明るい未来なのだろうか。いや明るい未来なんて誰が決めたのだろう。それとも先があるだけ明るいということなのか。どちらにしろ、憂鬱にしかならなかった。だって粋は勉強が好きではないから。与えられたものは熟すけれど、得意ではない。でもやらなければいけないものだから、やる。それだけ。そんな中学三年生だった。
だから正直、高校は今の成績から無難なところと制服で決めた。それが第一志望。第二志望は成績で辛うじて行けそうな高校の名前を書いた。第三志望は制服のみで成績は二の次。第三になると行く気というよりはミーハー面が強い。ただ欄があるから書いた。

しかし今になって思えば、そんな選択肢も意味があったんだなと粋は思う。

「ヤスキヨ、帰りましょう」
「うん。藍海ちゃん。プリント提出間に合った?」
「間に合わせたから大丈夫。待たせたわね」
「全然待ってないよ。今日はどうする?」
「コンビニ寄ってから帰りましょう」
「りょーかーい」

でなければ、仲が良くなった彼女と出会えなかったのだから。