第一志望もあくまで志望
高校に行けたとして、やはりその先には大学受験がある。さらにその先には就職活動がある。これは明るい未来なのだろうか。いや明るい未来なんて誰が決めたのだろう。それとも先があるだけ明るいということなのか。どちらにしろ、憂鬱にしかならなかった。だって粋は勉強が好きではないから。与えられたものは熟すけれど、得意ではない。でもやらなければいけないものだから、やる。それだけ。そんな中学三年生だった。
だから正直、高校は今の成績から無難なところと制服で決めた。それが第一志望。第二志望は成績で辛うじて行けそうな高校の名前を書いた。第三志望は制服のみで成績は二の次。第三になると行く気というよりはミーハー面が強い。ただ欄があるから書いた。
しかし今になって思えば、そんな選択肢も意味があったんだなと粋は思う。
「ヤスキヨ、帰りましょう」
「うん。藍海ちゃん。プリント提出間に合った?」
「間に合わせたから大丈夫。待たせたわね」
「全然待ってないよ。今日はどうする?」
「コンビニ寄ってから帰りましょう」
「りょーかーい」
でなければ、仲が良くなった彼女と出会えなかったのだから。
作品名:第一志望もあくまで志望 作家名:楡原ぱんた