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楡原ぱんた
楡原ぱんた
novelistID. 10858
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宇宙人相手に抵抗は無駄である。

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八月十五日 海璃(なかあき かいり)は何度も危ない瞬間というものにぶつかってきた。否、何度も危ない瞬間が向こうから大型トラックを乗りこなしながら海璃に突撃してきていたのだ。毎度のことながら頭を抱えて転がりたくなる。一週間ぐらい自室のベッドから出て行きたくないレベルだった。
それが、いま、目の前で仁王立ちしている。絶望的だ。

そもその原因であるのは血の繋がった実の、しかも双子の姉である。二卵性の割には比較的、顔立ちは似ているが中身は宇宙人だ。海璃の予想斜め上、半回転するぐらいの頭脳の持ち主である。率直に言えば理解したくないタイプであるし、関わりたくないタイプでもある。だが、姉だ。どうやっても関わってくる。避けようにも向こうからダンプカーでくる。無理ゲーというものであった。いまの話なのだが。

「ねぇ、誰が何て?」

原因の原因は海璃の軽口だった。ほんの揶揄い。他意はなく日常会話の延長線上だ。

「海璃くん、誰が何を知らなくて、何でダサいの?」

だというのに、圧が凄い。それだけではない。いつの間にか姉である藍海(あいみ)は手に縄のようなものを携えている。どういうことだ。冷や汗が流れた。
自業自得だと思うかもしれないが、それ以上に訳の分からない人間が姉だということが海璃には一番絶望的だった。

「いやいや、その縄なんだよ!?」
「縄だけど?」
「ちっげーよ!! どこから出したんだよ!?」
「通学鞄からだけど」
「何で!?」
「何ででしょう?」
「知らんわけあるか!! 知ってるから鞄に入ってんだろ!!」
「よく回る口なのに、さっきの問いには答えてくれないのね」

側から見たら天使の笑顔に違いない。藍海は綺麗な笑顔を見せた。あ、ヤバい。とたん表情筋が引きつる。

「ほら、良いから、そこのソファーに座って、ね?」

真っ青の顔をして大人しく藍海のいうことを聞く海璃であった。