ずっと一緒に、
泰原 粋(やすはら きよ)は不思議そうに首を傾げる。夏祭りはだいぶ先で、まだ夏になってもいない。加えていうなら夏祭りに行く予定も立てていない。そんな話、いま、初めて聞いたのだ。八月十五日 藍海(なかあき あいみ)は微笑んで頷いた。
「海外に行くんですって」
「ほー」
「どこ行くか知らないけど、お土産は買うわよ」
「何でどこ行くか知らんの」
「弟の情報なの」
パラリと辞書を捲る。本日は宿題の見せ合いをするために、図書館で二人過ごしていた。利用者数は休日だが多くない。たまたま図書館の隅っこを利用できたのでそこで二人してコソコソとしているわけである。
「弟って双子の」
「そう双子の海璃(かいり)くん。知らねーのだっせぇって言われたから縛ったわ」
「え?」
「それは良いんだけどね。だから、今年はダメなんだけど、来年は一緒に夏祭り行きましょう?盆踊りもしたいの」
そもそも今年の夏祭り自体あるのかどうかすらわからないし、もしかしたら旅行から戻ってきてからでも間に合うのではなかろうか。
「今年でも良くない?」
「いや念のため来年の予約させといて」
「物好きだね?。良いよ、今年も来年も一緒に行こう」
その前に目の前にある宿題を手伝って下さいね。粋は藍海のノートを手に取る。
「嫌よ。まずは自力でって相場が決まっているの。見守っててあげるわ」
満面の笑みでノートは取り上げられたのだった。