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ありがとう! ライダー!

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 ライダーを除く3人は超音波による攪乱からは解放された、しかし超音波メス攻撃は別、それは目には見えないが物理的な攻撃手段なのだ。
「うわっ」
「うげっ」
「きゃぁ」
 コウモリ男の超音波メスは仲間たちを容赦なく襲う……。
 これがライダーたちの戦い……彼らはヒーローであることは間違いない、しかし、これは生死をかけた戦いなのだ、TVドラマならばハラハラしながらも『正義は勝つ』と信じていれば良い、だが実戦ではそんな保証はどこにもない。
 速人は激しい頭痛に苛まれながらも聴覚に神経を集中した……すると、聞こえる、超音波メスが空気を切り裂いて飛んで来る音が聞こえる……。
「ヘルメットをかぶれ! 超音波メスの音を聞くんだ!」
 速人がそう叫ぶとライダーマンとマッスルは再びヘルメットを装着し、レディ9も地獄耳を発動する、すると、彼らも超音波メス攻撃をかわせるようになった。
 だが……やはり体は思うようには動かない、攻撃を避けることが精いっぱいで反撃はおぼつかない、それでもライダーマンはアタッチメントアームで、レディ9はクナイで攻撃を試みるが、コウモリ男には苦も無くかわされてしまう、空を飛ぶ相手にはライダーの跳躍力が必要なのだ……どうすれば……。

 突然、死神博士の怒号が響いた。
「何? 地獄大使だと? 貴様、何をしにノコノコ出て来たのだ!」
 見ると地獄大使が現れたではないか、コウモリ男一人に苦戦しているというのに……。
「ふん、ワシとて来たくて来たのではないわ! 死神、貴様一人では心もとないから助太刀してやれという首領様の御意向なのだ……出でよ! DaiGoN2!」
「なんだ? その弱そうな怪人は、掃除のおばさんにすら勝てそうにないが?」
「貴様が作る怪人のようにただ暴れるばかりが能ではないわ、DaiGoN2はメンタリスト怪人よ、ライダー共の鋭敏な聴覚を逆手に取って精神をかき乱すことで攻撃するのだ、おい、死神、ライダー共の動きを封じてやるからさっさと片付けてしまえ! やれ! DaiGoN2!」
「はい! 地獄大使! コウモリさん、マッスルは左右の動きが鈍いです、続けざまに超音波メスを……」
「待て! DaiGoN2 複数の敵を相手にした時は一番弱いヤツから狙うのが鉄則だぞ、レディ9を狙わせんか」
「あ、でも、女性ですし、美し……」
「ええい! 世界征服を成し遂げれば世界中の美女だって思いのままだ! あのくの一くらいの女ならいくらでもおるわ!」
「おっと、そいつは聞き捨てならねぇな、人の恋女房をディスってるんじゃねぇよ、こいつくらい良い女は世界中探したっていやしねぇぜ」
「マッスル! 貴様、どうやって復活を……」
 その答えは死神博士の絶叫の中にあった。
「地獄大使! ワシの邪魔をするな!」
「邪魔だと? 心ならずも加勢してやってるのがわからぬか!」
「見ろ! コウモリ男を!」
「コウモリ野郎がどうした?」
「貴様のメンタリスト怪人とやらの異常な早口にコウモリ男が苦しんでいるではないか!」
「う……何故だ?」
「コウモリ男も超絶聴覚の持ち主だ、そいつの攪乱戦法はコウモリ男の戦闘力も削いてしまうではないか!」
「な、なんだと?」

「そうさ、DaiGoN2の攪乱戦法も厄介だがそいつには物理的攻撃は出来ないからな、それに、見ろ、そいつも自分がしでかしたことに気づいて言葉を失っているぞ」
「あ、しまった! DaiGoN2! 攪乱攻撃を続けんか!」
「よせ! コウモリ男の邪魔をするな!」
「死神! 貴様に手柄は渡さん!」
「何だと? それが本音か! コウモリ男! 構わぬ! DaiGoN2から血祭りに挙げろ!」
「やれるものならやってみろ! 確かにDaiGoN2に物理的攻撃力はないが、このワシが付いている限りこいつに手出しはさせん! 電磁ムチの餌食にしてくれるわ!」
 死神博士と地獄大使の仲間割れ、それぞれが率いる怪人も戸惑っている。
「ライダー! 今だ!」
「おう!」
「プロレス名物・ツープラトン攻撃を見せてやろうぜ!」
「それか! わかった!」
 マッスルが腰を低くして両手を組み足場を作る、ライダーがその手に足をかけて跳ぶと同時にマッスルがライダーを投げ上げる、ライダーの跳躍力にマッスルの怪力が加わってより高く跳躍することが出来るのだ。
 それに気づいたコウモリ男は跳んで来るライダーめがけて超音波メスの乱れ打ち。
(くっ……負けるものか!)
 ライダーは空中で体を丸めて高速回転し、超音波メスを弾き返す、とは言え、背中には無数の切り傷、だが、世界平和を守るためならばこれしきのこと……。
「くらえ! ツープラトン・ライダーキック!!」
「ギャァァァァァァァァァァァァ!」
「あっ、コウモリ男! しっかりしろ!」
 死神博士もそう叫ぶが、ライダーキックをまともに受けたコウモリ男は真っ逆さま、地面に叩きつけられて動かなくなった。
 だが、ライダーも無傷ではない、コウモリ男の超音波、DaiGoN2の攪乱攻撃の影響もまだ残る上に超音波メス攻撃も受けたのだ、コウモリ男同様に落下して行く……間一髪、マッスルに受け止められて地面に激突することは避けられたが、完全に意識を失ってしまった……。

ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!

(ここは?……俺の部屋だ……)
 速人は元の自分の部屋、自分のベッドで目を覚ました。
(俺は……ライダーに転生していたはずだけど……ひょっとするとあれは夢だったのか? あ、痛てててて……)
 だが、背中に激しい痛みを感じる、起き出して鏡に映して見ると無数の切り傷が残っている。
(夢……じゃない……やっぱり俺はライダーに転生していたんだ、あれは本物の戦いだったんだな……)
 気を失ったことで異世界から元の世界へ戻れたらしい……。
(厳しい戦いだった……ライダーたちはあんな戦いを続けているのか……)
 ライダーは憧れだった、だが、実際にライダーに転生してみると、命がけで戦ってくれていることが身に染みてわかる……。
 背中だけでなく、体中が痛む、しかし、速人は今まで感じたことのない充実感、達成感を感じていた……。

ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!

「とおっ!」
「イーッ!」
 今日も速人はショッカーと戦っている、だがそれは実際の戦いではなく撮影のための戦い、速人はライダーのスーツアクターとして、TVドラマ版『仮面ライダー』に出演しているのだ。
 命がけでショッカーと戦ってくれているライダーたちに感謝を込めて、彼らの活躍、そして、共に戦う仲間の絆の大切さを一人でも多くのチビっ子たちに知ってもらうために。
 だからどんなアクションにも決して手は抜かない、ライダーたちの本当の戦いを知っているのだ、一歩間違えば死につながるほどの戦いを……手を抜いていてはそれは伝わらないと信じているから……。
 そして、速人の進言でドラマのエンディングには必ず「ありがとう、ライダー」のナレーションも加えられるようになった。
 ある意味、速人もまたライダーチームの一員となったのだ。
作品名:ありがとう! ライダー! 作家名:ST