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白久 華也
白久 華也
novelistID. 32235
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愛息の手

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ププププッ ププッ
ププププッ ププッ

シューッ シューッ


さまざまな電子音が響く集中治療室

無意識に暴れて
大事な管を抜いてしまうかもと、
縛りつけられた両手


この手は、働く手だった

ささくれ、ガサガサに荒れ
石鹸と爪ブラシで擦っても
機械油が染み付いて茶色く染まった指先
汚ならしく見えるけど
母には誇らしい
働く手


それなのに
打撲と擦過傷、骨折で
腫れ上がり、青黒く変わり果て
自由を失った手は、
やっぱり
ささくれ、ガサガサで、茶色い

それが哀しくて



命が助かって、ありがたい
脳の後遺症もなく、ありがたい
脚は問題なく、ありがたい
リハビリ頑張れば手もきっと
以前と同じ働きは・・・・?


あれから季節は三つ

リハビリのため、揉みほぐす
柔らかな皮膚、しっとりとした指先
茶色い汚れは今はない

幼子が歳を聞かれて、
指で二つ、三つとうまくできない、あれ
うまく指が合わさらない

親指と小指を重ねる練習
ゆっくり揉みほぐす
季節三つを取り戻す

ねじを回す
部品を分解する
部品を組み立てる
そういう手に
もう一度生まれ変わってと
祈りを込めて
母のゴツゴツした手は容赦なく
揉みほぐすのだ
自分より大きいけれど
柔らかい皮膚になってしまった
働くはずの手を

作品名:愛息の手 作家名:白久 華也