先生の言葉 全集
79.呪いを解きたい
おやおや、どうしたんですか。そんなに勢いよくこの部屋に入ってきて。そんなに急がなくても、別に私は逃げませんよ。それで、ご用は何なんですか。
呪いを解く練習をさせてほしい？ ええ、分かりましたけど、そんなに急いでいるのは何か理由があるんですか。例えば、仲間が遭難したとか……。
って、あなた。よく見たら仲間の5人、みんなまひしているじゃないですか。こんなところにいる場合じゃありませんよ。早く街に戻るか、まひを治す魔法を使わないと。
え、そんなことをしていられない、早く呪いを解く練習をしたい？ 一体、何があなたをそんなに急がせるんですか。よく見たらあなた、女僧侶の方ですよね。ならばまひを治す魔法だって知ってるでしょうに。ああ、なるほど。寺院に払う金がない上に、まひを治す魔法も覚えていないから練習をさせてくれなんて言うんですね。でも、さすがに僧侶一人で私を倒すのは難しいと思いますよ。一度、街で体制を整えてきたほうが……。
そんな理由じゃない？ じゃあ、一体どんな理由なんですか。急いでる中、申し訳ないですが、ちょっと話してみてくださいな。
ええ。2階を探索してたんですね。そしたら、イケメンのゾンビを見かけたと。はあ。ゾンビさんはたまにお会いすることがありますが、彼らは正直、決して麗しいほうではないと思うんですが……。はあ、とにかく絶世の美男子だったんですね。それで、絶対に彼の呪いを解いてみせると、パーティのみんなに攻撃しないよう指示したら、うまく呪いが解けなくて5人はみんなまひしたと……。
なるほど、それで一刻も早く呪いを解く練習をしたいと。取りあえず事情は分かりましたが、そのゾンビさん、直接倒すのでは駄目なのですか。
そしたら、あの端正な顔が傷ついてしまう？ あの麗しいゾンビをわが物にするには、私の手で呪いを解く他にない？ うーん。
まあ、呪いを解けば、確かにあなたのものになるかもしれませんが、代わりに生命活動を停止してしまいますよ。それだときっと抱き枕と変わらないと思いますが、あなたはそれでもいいんですか。
むしろ都合がいいと。そうですか。じゃあ呪いを解く練習をと言いたいところですが、結局、呪いが解けるかどうかはレベルの高さに依存するので、練習をするよりも、街で仲間のまひを治して、私を倒しに来たほうがいいと思います。
ですから、それまでは、そのゾンビさんが他の誰かに倒されないよう祈っていてくださいね。