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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(1)

INDEX|109ページ/110ページ|

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「クククッ、まさか同じ学院の教師と第1予選から当たるとは」
「ファウストちゃんと手合わせするのははじめてねぇん!」
「イースタンマジックとは初めて戦う。じつに興味深い」
 セイメイの操る魔導は一地域でのみ発達した魔導。元を辿れば同じでも、派生や進化の過程が違えば、主流の魔導では対抗手段を取るのがなかなか難しいのだ。
 直接的な武器の使用は認められていないが、魔導具の使用は3つまで認められている。これが切り札となる。
 魔導具マニアのファウストがなにを出してくるか見物だ。
 ルーファスが食い入るように見ていると、その後ろからだれかが近付いてきた。
「やあルーファス」
「クラウスじゃないか、こんなとこ来て平気なの?」
「主催者ということになっているから、予選の見学くらい平気だろう。ところでエルザに勝ったそうじゃないか?」
「まあ、勝ったというかなんというか」
「ちょうど来たときには勝負はついていたみたいで、どんな負け方をしたか知らないけど、君に負けたせいで酷く落ち込んでね。修行の旅に出るとか言い出して留めるのに一苦労したよ」
「ごめん」
「ルーファスが謝ることじゃないさ。その調子で優勝目指して頑張ってくれよ、応援してるよ」
 そう言ってクラウスは去ってしまった。
 なんか変なプレッシャーをかけられてしまった。
 ぎゅるる〜。
 ルーファスのお腹が不穏な音を立てた。
 休憩もままならないうちに、ルーファスの予選第2回戦がはじまろうとしていた。
 呼ばれてリングに上がったルーファス。
 もうひとりリングに上がったのは黒い翼を持った女。
 ルーファスはツバを飲んだ。
「……今度こそ死ぬかも」
 大会のルール上、殺しは御法度なのでたぶん平気。事故死はあるかもしれないけど。
 ルーファスの対戦相手はエセルドレーダという悪魔だった。
 浅黒の肌に銀の長い髪、金色の瞳が獲物を捕らえ、漆黒の翼でどこまでも追い詰める。
 ボンテージ姿はどこか女王の風格を魅せている。
 しかし、この悪魔は女王ではなく、ある人物の仲魔である。
 その人物こそが、世界で3本の指に入ると謳われる魔導士アレイスター・クロウリー。クラウス魔導学院の学院長その人だ。
 エセルドレーダはクロウリーの秘書であり、その主の力を考えれば当然彼女の実力も計り知れない。
 もうルーファスは心に決めていた。
 レフリーが合図する。
「――はじめ!」
 その次の瞬間にはルーファスは口を開いていた。
「僕の負けを……ボギャッ!」
 ルーファスが言い終わる前に、エセルドレーダは目に留まらぬ早さで、ボディに10発、アッパーを1発、浮き上がった身体に空かさず回し蹴りで1発。
 鼻血が噴き出た方向と左右対称にルーファスがぶっ飛んだ。
 華麗なKO。
 無様なリングアウト。
 そして、大会最速の勝利記録と、同時に敗北記録を樹立したのだった。

 夜は深く染まり、月と星がきらめきながら歌う。
 王都アステアの横を流れるシーマス運河も静かな調べを奏でていた。
 目を覚ましたルーファスはすぐに気づいた。
「またか……」
 気を失って、またハナコに膝枕されていた。
 今度はベンチではなく、運河のほとりの芝生だ。
 今日はとてもルーファスにとって疲れた1日だった。それももうすぐ終わる。建国記念祭はじきに幕を閉じようとしていた。
 ただ一部の人間たちは2次会3次会と称して朝まで飲むつもりだろが。
 膝枕からルーファスは逃げようとしなかった。
 心地良くて溜まっていた疲れが取れていくような気がする。
 微かに聞こえてくる祭りの音が、なぜだか寂しさを募らせる。
 何度も来るんじゃなかった、何度も帰ろうと思ったのに、今はそれをルーファスは懐かしく感じていた。
「お祭り楽しかったよ、君といっしょに回れて」
「わたくしも楽しかったです」
「でも終わっちゃうんだね」
「家に帰るまでがお祭りです」
「それを言うなら遠足じゃ?」
「お祭りも遠足も思い出を家まで持ち帰るのは同じですよ」
「そうだね、思い出はちゃんと忘れず持ち帰らなきゃね」
 なんだか雰囲気バリアをつくっちゃってるお二人さん。
 そんな二人の間に猛ダッシュで割って入ってきた仔悪魔がいた。
「ルーちゃんやっと見つけたよーっ!」
 ピンクのツインテールをジタバタさせながらビビが駆け寄ってきた。
 ビビはお二人さんの前にビシッと立った。
「ルーちゃんこのひとだれ?」
 じと〜っとした眼でビビはルーファスを見つめた。
 答えたのはもちろん! 
「もちろん婚約者です」
 ハナコだった。
「ええぇ〜〜〜っ!?」
 思わず叫び声をあげたビビ。
 ビビちゃんショック!
 慌ててルーファスは否定する。
「今日初めて会ったばかりで結婚なんてとんでもないよ。もちろん付き合ってもないんだし」
「じゃそれなに?」
 ビビはお二人さんを指差して言葉を続ける。
「どう見ても膝枕だよねぇ? ホントのホントはどーゆー関係なわけ?」
 再びじと〜っとした視線。
 慌ててルーファスは飛び起きた。
「誤解だって! 気を失って気づいたらこうなってただけで、不可抗力だよ!」
「ホントかなぁ〜? じゃなんで早く起きないわけ?」
 またもじと〜っとした視線。
 ハナコも立ち上がった。
「それでは参りましょうか?」
「「は?」」
 ルーファスとビビの声が重なった。
 またお祭りで大変な目に遭わされるのだろうか?
 いや違った。
 もっと衝撃的なことが起ころうとしていた。
 ハナコの唇がルーファスの頬に触れた。
 チュッ♪
「今日は本当に楽しかったです。これがわたくしからのお礼です」
 キスがお礼なのか!?
 ビビちゃん固まる。
 しかし、本当のお礼はこれからだった。
 な、なんと、突然ハナコがスカートをめくり上げたのだ。
 しかもノーパン!!
 いや、ルーファスが驚いたのはそんな些細なことではなかった。
「ちんこーーーー!?」
 思いっきり口に出してしまった。
 良かった、口に出したのがビビじゃなくて。
 まさかのハプニング発生。
 すっかり少女だと思い込んでいたら、雄しべがついていのだ。
「ルーファスさんがくれたお汁の力、その力で華を咲かせて見せましょう」
 汁ってなに汁って?
 ルーファス汁?
 そして、さらに衝撃的なことが起ころうとしていた。
 ハナコを雄しべを空に向けた。
「玉屋〜〜〜っ!」
 それって股間についてる……ではなかった。
 ハナコの股間から発射された二つの玉が夜空に大きな華を咲かせた。
 煌めく花火。
 それは魔力の煌めきだった。
 大輪の華が散ったとき、ハナコの姿もどこかに消えてしまっていた。
 呆然と立ち尽くすルーファス。
「…………」
 眼に焼き付いた光景は一生忘れることはないだろう。
 ハナコの花火。
 しばらくしてビビが現実世界に復帰した。
「ル、ルーちゃん……今のって?」
「私に聞かないでよ……それにしても、だれだったんだろう、あの子?」
「変態だったのは間違いないと思うけどぉ」
 最後の最後にだいぶ変態だったことは間違いない。
 気を取り直してビビは笑顔でルーファスの顔を覗き込んだ。
「ねえルーちゃん!」
「なに?」