玉手箱
太郎はしわしわになった両手を見ながら、しばらくへたり込んでいましたが、やっと立ち上がると、弱々しくこぶしを固めながら、後にしてきた竜宮のほうを向きました。
すると、どこからか声が聞こえてきました。
「たったあの程度のことを素晴らしい善行、見返りとしてあれだけの歓待が得られる善行だと思っていたのか。大の大人が子供たちを買収したあれが」
太郎はキョロキョロしますが、声の主は見つからないまま、それは続きました。
「あれだけの歓待を求めるなら、大業に挑みなさい。おまえは今はまだ若いが、人生はあっという間なのだ」
太郎が気づくと、子供達が立ち去っていくところでした。亀も人語等話すわけも無く、太郎を振り返ることも無くただ海へと向かっていきました。
(了)