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泉絵師 遙夏
泉絵師 遙夏
novelistID. 42743
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想いの笹舟

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脈略のない行動力


 私という人間を端的に一言で表すと、おそらくこうなると思う。
 脈絡のない行動力。
 思い立って急に何かを始めたり、他の人が見るとびっくりするような突拍子もないことをしてみたり。
 それでも自分では無計画に行動しているという意識は無く、一応はきちんと適当に計画をもって行動に移している……つもり。
 もちろん、思い立っていきなり始めてしまうこともある。
 たとえはお話を書くとか。それなら何にも危険はないし、いつでも始められるなら、今でしょとばかりに。

 そう、これまでの人生の中で誰もが驚き、そして誰もに呆れられたこと。
 歩いて海を見に行きたい。
 私の住んでいた京都には海がなくて、海に行くというだけでワクワクだった。
 昔の人みたいに歩きで海まで行ったら、どんな感じなんだろう?
 ただそれだけのこと。
 ただそれだけのために、二日間で計画し、実行した。
 せっかくだから日本海じゃなくて、もっと広い太平洋へ。
 奈良県の五条から和歌山県の新宮まで150キロ。
 高校時代はワンゲル部だったから、脚力と持久力だけは自信があった。
 JR五条駅を朝8時に出て、天辻峠を越え、旧大塔村あたりで日没を迎えた。
 僻地も僻地、関西でも秘境中の秘境だから、国道でも街灯はなく、ヘッドランプを灯して単独夜間行軍をしていると、奈良交通のバスが停まってくれて「町まで乗りなさい、お金いらないから。一人歩きは危ない」って言ってくれたり、巡回のミニパトに職務質問されたりしながら夜通し歩いた。
 どこまでも続く暗闇の谷の先に小さな灯りを見つけた時の喜び、真っ暗な中を歩く不安。町にいたら絶対に知ることのなかった感覚。
 正直、怖かった。
 だから歩き続けた。
 翌朝、十津川温泉で朝風呂に入り、一睡もしないまま歩き出した。
 でも、いくら脚力とかに自信があっても、どうにもならないことがあった。
 靴擦れと、マメ。
 足の裏全部がマメになって、結局新宮まで15キロ地点でリタイアしてしまった。
 2泊3日。
 というより丸二日以上歩き続け、その間水分以外ほとんど口にせず。
 バスで到着した新宮駅でうどんを食べたとき、死ぬほどおいしかった。
 目的は果たせなかったけど、私の人生で最も無茶したこと。
 でも、それでしか感じ得なかったことが確かにあった。
 あの後1週間くらい激痛で歩くのも難儀したけど、後悔はなかった。
 馬鹿は、やれるうちにやった方がいい。
 もし今それをやったら、職務質問どころか一晩拘留されるかもしれないから。

 こういう愚にもつかないことを思いつき、そのまま行動してしまうのが私。
 でも、そういう自分が好きだったりする。
作品名:想いの笹舟 作家名:泉絵師 遙夏