久遠の時空(とき)をかさねて ~Quonฯ Eterno~上
保線小屋の中だった。灯りを小さくしたランプが天井から下がっている。隣ではマルカが軽い寝息を立てていた。暖野は小さく息をついた。
また、夢を見た。
だが、今回はこれまでとは随分と違ったものだった。
前は確か、進学せずに就職しようとしていたはず。だが、今見た夢は大学のようだった。
暖野はマルカを起こさないようにそっと起き出し、外に出た。
空には満天の星空。月は出ていない。鳥肌が立つような美しさだ。
そうね――
風が流れる。
こんなんじゃ、私の想いなんて、埋める隙間もない――
はっと、我に返る。
私の想いって、何――?
でも、うん――
確かに、こんなに星がいっぱいなんだもの――
甘い感傷に浸りながら、彼女は空を眺めていた。
一陣の風が吹き過ぎ、暖野は身震いした。
起きるにはまだ早過ぎる。もうひと眠りしようと、暖野は小屋へと戻った。
作品名:久遠の時空(とき)をかさねて ~Quonฯ Eterno~上 作家名:泉絵師 遙夏