久遠の時空(とき)をかさねて ~Quonฯ Eterno~上
ちょっと待ってよね。何だっていうのよ。
え? 地震?
違う。誰かが私を揺さぶってるんだ。
私を――?
決まってるじゃない――。
じゃあ、今の私は? 私は……
暖野は薄目を開けた。
「あ、お母さん……どうして、こんな所にいるの?」
はっきりしない頭で珠恵を認めて、暖野は言った。
「何言ってるのよ。暖野、大丈夫⁉」
珠恵の声は、真剣だった。
「どうしたのよ、一体――」
そこまで言って、暖野は言葉を切った。「みんな、何があったの? それに、ここはどこ?」
珠恵の後ろには、心配げな表情の雄三と修司もいた。
「ちょっと、しっかりなさいよ!」
珠恵がまた、暖野の肩を激しく揺さぶる。
「よせ」
雄三が厳しい声で言う。
「そ、そうね」
「お母さん、痛い」
「え? ああ、ごめんね」
珠恵が手の力を緩めた。だが動転しているせいで加減がうまくできずに、暖野は危うく床に打ちつけられるところだった。
それを防いだのは雄三だった。
「大丈夫か?」
父が穏やかに言った。
「ねえ。何があったの?」
暖野は訊く。
「そうか。何も分からないんだな」
雄三は、珠恵と修司の方に向き直った。「おい、学校へ連絡を――。それと、お前はもう行きなさい」
珠恵は頷くと、暖野の傍から離れた。修司もそれに従い、部屋を出て行った。
「ここ……私の部屋……」
「そうだ。お前はここで、倒れていたんだ」
「倒れて……」
「ああ。お前、本当に大丈夫か?」
「え、ええ……」
「今日は学校を休め。今、母さんが電話している」
暖野は力なく頷いた。
珠恵が戻ってきた。
「とりあえず、今日は休ませてもらうよう言っておいたわ」
「うん」
珠恵へ頷いてから、雄三が暖野に向き直る。「一日、ゆっくりしていろ。あんまりうろつくんじゃないぞ」
そう言いおいて、父は部屋から出て行った。
暖野は混乱していた。
私は――何者なの?
どれが、本当の私なの?
作品名:久遠の時空(とき)をかさねて ~Quonฯ Eterno~上 作家名:泉絵師 遙夏