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泉絵師 遙夏
泉絵師 遙夏
novelistID. 42743
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久遠の時空(とき)をかさねて ~Quonฯ Eterno~上

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 ちょっと待ってよね。何だっていうのよ。
 え? 地震?
 違う。誰かが私を揺さぶってるんだ。
 私を――?
 決まってるじゃない――。
 じゃあ、今の私は? 私は……
 暖野は薄目を開けた。
「あ、お母さん……どうして、こんな所にいるの?」
 はっきりしない頭で珠恵を認めて、暖野は言った。
「何言ってるのよ。暖野、大丈夫⁉」
 珠恵の声は、真剣だった。
「どうしたのよ、一体――」
 そこまで言って、暖野は言葉を切った。「みんな、何があったの? それに、ここはどこ?」
 珠恵の後ろには、心配げな表情の雄三と修司もいた。
「ちょっと、しっかりなさいよ!」
 珠恵がまた、暖野の肩を激しく揺さぶる。
「よせ」
 雄三が厳しい声で言う。
「そ、そうね」
「お母さん、痛い」
「え? ああ、ごめんね」
 珠恵が手の力を緩めた。だが動転しているせいで加減がうまくできずに、暖野は危うく床に打ちつけられるところだった。
 それを防いだのは雄三だった。
「大丈夫か?」
 父が穏やかに言った。
「ねえ。何があったの?」
 暖野は訊く。
「そうか。何も分からないんだな」
 雄三は、珠恵と修司の方に向き直った。「おい、学校へ連絡を――。それと、お前はもう行きなさい」
 珠恵は頷くと、暖野の傍から離れた。修司もそれに従い、部屋を出て行った。
「ここ……私の部屋……」
「そうだ。お前はここで、倒れていたんだ」
「倒れて……」
「ああ。お前、本当に大丈夫か?」
「え、ええ……」
「今日は学校を休め。今、母さんが電話している」
 暖野は力なく頷いた。
 珠恵が戻ってきた。
「とりあえず、今日は休ませてもらうよう言っておいたわ」
「うん」
 珠恵へ頷いてから、雄三が暖野に向き直る。「一日、ゆっくりしていろ。あんまりうろつくんじゃないぞ」
 そう言いおいて、父は部屋から出て行った。
 暖野は混乱していた。
 私は――何者なの?
 どれが、本当の私なの?