何に負けたんだ?
「ついに!」
その日の下校時刻。
廊下の窓を叩く雨に、衣織さんは目を輝かせます。
「念願の相合傘♡」
隣に立っている久作君を肘で突きました。
「じゃあ、持ってきて」
「何を だ?」
「あんたの傘に、決まってるでしょ?」
「…俺は、持ってきてないぞ」
顔色を変える衣織さん。
「ど、どうしてよ。」
「今日 雨が降るなんて知らなかったし」
「て、天気予報ぐらい、確認しろ!」
「─ お前の傘を、使えば良いだろ。」
「わ、私は…あんたの傘に 入れてもらうつもりだったの!!」
「は?!」
「だから当然、傘なんか 持ってきてないわよ!!!」
「。。。」