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泉絵師 遙夏
泉絵師 遙夏
novelistID. 42743
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空のメッセージ

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あなたのこころに私がいないので、私はあなたから去ろうと思いました。
 あなたは私がいなくなっても、そのことには気づかないでしょう。
 あなたはいつも私の前にいながら、わたしをその瞳の奥までは入れてくれませんでした。
 あなたはいつも遠くを見ていて、私を透かしたその向こうばかり見ていて、すぐ前にいる私を見てはくれませんでした。
 あなたが見ているものは、いつも私を通り越したずっと後ろで、私はついにそれを見ることもできませんでした。
 あなたにとって私は、その向こうを見るためには邪魔な存在でしかなくて、むしろいなくなった方がいいと思っていたのでしょう。
 それでも私は、いつかきっと私を見てくれると信じて、笑ったり拗ねたり、気を引こうとしました。
 あたたはそれに笑ったり、ちょっとむくれたりしたけれど、それさえ私を空気のように素通りして、後ろの遠くへと消えていきました。
 あなたに投げかけたことばは、あなたの瞳で跳ね返されて、私の心を切り裂くばかりでした。
 私の辛さやかなしみさえ、あなたは黙って投げ返し、私を打ちのめしました。
 もう、身も心もボロ屑のようになって、それでもあなたの前にいられるなら、それでもいいと思っていました。
 いつかきっと、あなたの肌の中に、そのぬくもりの中に、私を包んでくれることを望んでいました。
 あなたの瞳が決して私を捉えることはないと知ったとき、わたしはあなたから去ろうと決めました。
 あなたは私がいなくなっても、これまでと同じように、私がいたはずの場所の向こうだけを見つづけるのでしょう。
 あなたのこころに私がいないので、私はあなたから去ろうと思いました。
 そして、あなたから背を向けて、あなたがずっと見ていたものを探しにゆきます。
 もし私がそれを見つけられたら。
 それをあなたに差しだしたら、そのときあなたは私を見てくれるでしょうか。
作品名:空のメッセージ 作家名:泉絵師 遙夏