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『掌に絆つないで』第三章

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Act.03 [コエンマ] 2019年8月7日更新


「バカもーーーん!! なんでもっと早く言わんのだ!!」
一度は王として配下を従えたこともある男だが、情けなくもかつての上司からゲンコツを頂く羽目になった。
「いででで」
コエンマはゲンコツだけでは収まりきらず、さらに幽助の頬を容赦なくつねった。
「冥界玉の光を浴びたとき、蔵馬も傍にいただとー!? しかも……すでにそれらしき者が蘇ってることに気づいていて、今まで黙っているとはどういうことだ!?」
「違うって! 気づいたんだよ! 黒鵺ってやつが突然現れて、蔵馬はそいつを死んだと思ったって言ってたから……冥界玉の光を浴びた後だったし、もしかしたらそうかもって」
「冥界玉は…三つに分かれているってこと……よね」
ひなげしは水晶玉を見つめながら、ため息をもらした。
飛影に忠告されて記憶をたどった幽助の報告に、霊界の者たちはそれぞれ頭を抱え込んでしまった。
「とにかく、蔵馬を探さねば! 幽助、居所はわからんのか」
「だから、オレは別行動で全然知らねえって」
「お前という奴は~~~~!!」
コエンマの怒りが頂点に達しようとしたとき、ぼたんが背後から袖を引く。
「大丈夫です、コエンマさま! 妖気計があります」
ぼたんの手には真新しい妖気計。
「あれ? 飛影に壊されたんじゃ…?」
幽助が頬を撫でながら問いかけると、「ちゃんと予備があったのさ」とぼたんは得意気に胸をそらす。
その横で落ち着きを取り戻したコエンマは、深呼吸のあとにため息を漏らした。
「それにしても…お前達に水晶を持たさなくて正解だった。もし持たせていたら、妖気計より先に水晶を壊されていただろうな」
飛影の性格から、本気でこちらの敵に回るとすれば、水晶を彼の目に晒すのは危険と考え、念のため幽助とぼたんを手ぶらで向かわせたコエンマ。その機転のおかげで水晶は守られたわけだが、解決には至らない。
「水晶がなくなってたら一大事でしたよ。封印することも出来なくなってしまいますから」
最悪の事態を想像してひなげしは無意識に水晶を守るような仕草を見せる。
「しかし、結局飛影は説得できず…か。いや、とりあえず奴が明日、どちらかの答えかを持ってこちらに来るのならまだ望みはある。問題は蔵馬だ」
「なら、また髪の毛探すか」
「そうだな」
コエンマが雷禅の部屋を見渡していると、北神と雪菜が茶菓子を盆に乗せて入ってきた。同時に、幽助の明るい声が響く。
「あいつの髪は長いから、すぐ見つかるだろ。北神たちがハゲでよかったぜ」
「幽助さん……。私達はハゲているのではなく、丸めているのです……」
眉間を痙攣させつつ鋭く突っ込んだ北神を横目に、幽助は悪気なさそうにカラカラと笑い、コエンマは苦笑した。