リボン・ちょうちょ
「まあ、きれい。だれのかしら」
あたりを見回してもだれもいません。みかは、家に持って帰りました。
みかは机の上にりぼんを置きました。
「明日、学校へ持って行ってみよう。そしたら落とした人がみつかるかも」
赤いりぼんはきらきらして、とてもきれいです。みかは落とした人がみつかったら、このりぼんをどこのお店で買ったのか聞いてみようと思いました。
「そしたら、ママに買ってもらおうっと」
その夜、みかは夢を見ました。
きれいな野原で、たくさんのちょうが飛んでいます。黄色いちょうや、紫のちょう、オレンジや黒いちょうもいます。でも、その中でたった一匹、白いちょうがしょんぼりしていました。
「なかよしの赤いちょうが、いたずらな妖精に魔法をかけられて、リボンにされてしまったんだ。それに、風にとばされて、どこかへ飛んでいってしまったんだよ」
白いちょうの目から、涙がひとつぶ落ちました。
そこで、みかは目がさめました。
「もしかしたら、このリボンかしら」
つくえの上に置いた赤いリボンは、さわってみても動きません。
「リボンだから、動くわけないか」
みかがりぼんをもって首をかしげていたら、ママが起こしにやってきました。
「まあ、みか。今朝は早く起きたのね」
ママは目をまん丸くしました。いつもおねぼうのみかはママが何度も起こさないと起きないのです。
ママはみかがどうして早起きなのか、知りたくなりました。
「みか、ひょっとしておねしょしちゃったの?」
と。わざと聞いてみると、みかはむきになって言いました。
「ちがうもん。このりぼんをちょうちょにしたいの」
みかはママにリボンをみせました。
「どうしたの? きれいなリボンね」
みかは、ママにリボンをひろったことや、夕べ見た夢のことを話しました。
「ママ、もし、このリボンが魔法をかけられたちょうちょだったら、どうしたら助けてあげられるかしら」
ママは少し考えてから、言いました。
「じゃあ、きっと、このリボンをちょうちょ結びにしてあげるといいんじゃない?」
「そうか。ママ。ありがとう」
みかは、さっそくお気に入りの人形を、たなから降ろしました。そして人形の髪からあおいりぼんをはずすと、くしでていねいにとかしました。それから束ねて、赤いリボンでちょうちょ結びを作りました。でも、あんまりうまくできません。
「こんな、へんな結び方じゃ、ちょうにもどれないわ。ママ、やって」
みかは、悲しくなって、リボンをほどこうとしました。そのとき、
「待ってください」
と、窓の向こうから小さな声がしました。
急いで窓を開けると、夢で見た白いちょうがいます。
「何度も結ぶと、羽がやぶれてしまいます。それに、大人が結んだのでは、魔法をとくことができません。どうかそのまま、リボンにお日様の光を当ててください」
みかはリボンの形をなおすと、人形を窓におきました。すると、朝の光をあびたリボンは、きれいな赤いちょうの姿にもどったのです。
羽の大きさがちょっといびつですが、ちょうはとても喜んでいます。
「みかちゃん。ありがとう」
白いちょうと赤いちょうは、みかのまわりをしばらく飛び回ると、外へ飛んでいきました。
なかよく飛んでいくちょうに、みかとママは笑いながら、手をふりました。