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晴れた日の過ごし方 1

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act.4 God Bless the Child


突然だが、セシル・ハーヴィはジェットコースターが嫌いである。
ジェットコースターだけではない。
世の絶叫マシンというものが、全て嫌いである。
子供の頃、シドに遊園地に連れて行ってもらったのだが、そこで思い出すのも嫌なくらいに酷い目に遭ってしまったため、ジェットコースターやフリーフォールが駄目になってしまったのだった。
バイキング船だけは大丈夫なのだが、「あれは乗り物だから」らしい。

夕食が終わってカインと二人でテレビを見ている時の事。
ランキング番組で人気の遊園地アトラクションが発表されていた。
その上位全てが絶叫系マシンだったので、セシルは綺麗な眉間に皺を寄せ、
「だからジェットコースターばっかりなのか!」
と言い放った。
カインは食後のコーヒーを啜りながら、不思議そうに訊ねる。
「何か不都合でもあるのか?」
「ローザと出かけた時に困るんだよ」
デートで遊園地に行くとアトラクションがほとんど絶叫系なので、その類いに乗れないセシルはメリーゴーランドでぐるぐる回るか、ゴーカートでファステストラップを出すくらいしか楽しみがない。
「僕が子供の頃は、もっと他の乗り物もあったけどな……」
テレビを恨めしそうに見つめるセシル。
その姿を見て、呆れたようにため息をつくカイン。
「調べてから出かけるという選択肢はないのか?遊園地など沢山あるだろうに」
「どこの遊園地も、皆そんなものだ」
「では、ブームが去るのを待つしかないな。それ以前に何故遊園地を選ぶ。動物園にしろよ」
幼い子供を宥めるかのようにそう答えたカインは、コーヒーのお替わりを注ぎに台所へ立った。
味にうるさいカインは、コーヒーメーカーで入れたコーヒーしか飲まない。
セシルは不貞腐れたような目で、カインの広い背中を睨む。
「カインはいいよ。カインは絶叫マシン大好きだから。僕の苦労なんてわからないだろうさ」
カインはセシルとは対照的に、絶叫マシン大好き男である。
高校の遠足で11種類の絶叫アトラクションがある遊園地に行った時、グループの人間の存在を忘れ、一人嬉々として乗り物の列に並んでいた。
彼は特に落下系アトラクションが大好きで、滅多に笑わないカインもフリーフォールに乗れば子供のようにはしゃぐ。
エッジやギルバートと遊園地に出かけた際、セシルを除く3人でフリーフォールに乗ったのだが、落下の最中『あははははは……』と、満面の笑みで高笑いしているカインが一番怖かったと、後にエッジが語っている。
カインは肩越しにセシルを見やると皮肉っぽい口調で、
「ああ、わからんな。ローザとデートできるお前の気持ちなど、わからんよ」
「…………」
カインの気持ちを知っているだけに、これにはセシルも反論できない。
コタツの上に突っ伏すと、絶叫アトラクションなんて大嫌いだ!と吐き捨てる。
何も、テレビ番組の内容に文句を垂れなくてもよかろうとカインは思うのだが、セシルとしては子供時代の嫌な思い出が蘇ってしまって、どうしようもないらしい。
「……一体シドは何をやらかしたんだ……?」
あの面倒見のよい頑固オヤジは、どうやってセシルにトラウマを植え付けたのだか……。
そんな事を考えながらコポコポと芳香を漂わせるコーヒーを注いでいると、突然家の電話が鳴る。
携帯電話全盛のこのご時世に、わざわざ自宅の電話にかけてくるなど。
「誰だ、一体」
訝しそうに眉間に皺を寄せると、台所に備え付けのコードレス子機に出るカイン。
電話の相手と2,3言葉を交わすと、コタツの天板に滑らかな頬を押し付けてテレビを見ている親友を呼んだ。
「セシル、電話だ」
「僕に?」
返す声も何処か気怠い。カインは子機をセシルに向ける。
「早く出てやれ」
「誰から」
「出ればわかる」
カインの端正な唇には、微かな笑みが浮かんでいる。
作品名:晴れた日の過ごし方 1 作家名:あまみ