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『掌に絆つないで』第二章

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Act.06 [幽助] 2019.6.18更新


風が唸る。氷河の国は、いつになく激しく吹雪いていた。
剣を抜き去った飛影と、雪菜と同じ顔をした氷女を残し、幽助たちは別室へ移動していた。
まさか飛影が、なんの話も聞かずに殺すことはないだろうと思うものの、不安はあった。気が動転していて、いつもの飛影では考えられない行動に出るかもしれないからだ。
しかし、切っ先を向けられた当の氷女は、あくまで剣が自らと飛影の距離を保つものと解釈し、凛とした眼差しをこちらに向け退室を要求した。
あれが、飛影の母親なのか。真実は幽助にもわかり得ない。とりあえず、この場の詳細は泪という氷女が話してくれた。

今から数時間ほど前、飛影の母である氷菜は、唐突に雪菜と泪の前に現れたのだという。
氷菜と懇意だった泪だが、彼女を見てすぐに氷菜だと確信することは出来なかった。目前に現れた氷菜は、彼女が死んだときよりも若干若く、雪菜と瓜二つというよりは、雪菜自身と疑うほど似ていたからだ。
「氷菜は、魂は自分自身のものだけれど、肉体は想像により作られたものだというのです。『誰に』と尋ねると……、『飛影』と……応えました」
「一度は死んだはずの母ですが、まるですべてを見ていたかのように、私も知らない兄のことを知っていました」
雪菜が対面時の母の様子を語った。
「お兄さんは城から捨てられたあと、飛影という名をつけられた。間もなく、第三の目を持ち、氷河の国へたどり着いた直後、人間界へ……私を探しに向かったのだと……」
話しながら、雪菜は何度も涙を堪えるも、その瞳から結晶体となった涙を溢れさせずにはいられなかった。
「お兄さんは再び魔界へ戻った後も、この氷河の国を忘れられずに生きている。そして今、心の奥深くで自分を呼び続けていると、そう言って泣いていました」
「飛影が呼び続けて……」
そうして母親が蘇った?
そんな都合のいい話があるだろうか。飛影が偽者と疑って剣を向けるのも無理はない。
雪菜につれられ氷河の国へ来て、その目で確かめたところで何を信じればいいのか、迷うなという方が困難極まりない状況だ。
「信じられないのは当然だと思います。私もそうでした。でも泪さんは……」
「あれは……間違いなく、氷菜です」
雪菜の言葉をさえぎるように、泪は言い張った。
「生前と何も変わってはいません。自らの命が途絶えると知っていて、忌み子を産み落としたあの氷菜に……間違いないのです」
まっすぐ自分を見つめる泪の瞳には、一片の曇りも伺えない。幽助は受け入れ難い事実を突き立てられ、ただ途方に暮れるよりほかなかった。