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『掌に絆つないで』第二章

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Act.05 [コエンマ] 2019.6.18更新


魔界へ赴き、冥界玉の封印に成功したなどという喜びは束の間。冥界玉の異変に気づいたひなげしの報告で、コエンマは再び頭を抱え込んだ。
「回収できたのは、その一部に過ぎないのか……」
「……はい」
封印のための札が貼られた箱を手にして、ひなげしは沈んだ声で肯定した。
「回収した冥界玉は、冥界の王を復活させられるほどの力を持っていません。でも、これは間違いなく冥界玉なので、エネルギーが分散しているとしか……考えられないんです」
「冥界玉は、誰かに寄生して力を発するものだと、言ったな?」
「はい。ほかの誰かも、幽助さんと同じように隠し持っている可能性があります」
昨日、赤紫に光る玉を目撃したと幽助は言っていた。口ぶりからして、飛影も同伴しているときの話。
幽助はその体内にエネルギーを取り込んでいた。ひなげしの持つ水晶がそれを教え、その力は幽助の体内から外へ放出され、今、目前の箱の中に封印されている。
「なぜ…水晶は飛影には反応しなかったのだ。幽助と一緒にいたなら、飛影が冥界玉を取り込んでいてもおかしくないはず」
「すでに体内から放出してしまったのかもしれません」
「というと?」
「自分の潜在意識の中に潜む欲望を叶え『何か』を復活させれば、冥界エネルギーは彼の身体を去ります」
飛影の欲望?
コエンマは改めて彼の人柄を思い出し、眉間に皺を寄せた。
以前の飛影なら、コエンマたちにとって脅威といえる欲望を潜ませていただろう。そう、幽助に出会うよりも前ならば。しかし、今の飛影が欲するものとは、一体なんなのか、コエンマには想像もつかなかった。
「冥界玉を使えば、一度は失った肉体さえ復活させることが出来ます。心の奥に秘めた故人を思う気持ちが、もっとも冥界エネルギーに共鳴しやすいので、きっと亡くなった誰かを蘇らせたに違いありません」
「魔界の者が、間違って冥界の王を復活させることはないのか?」
「冥界の王を復活させようと思えば、王の復活を願う者と、それ相当の肉体も必要です。いわば、生け贄のような者がいて初めて成せること。ましてや、今のように冥界玉の力が分散された状態では王の復活は見込めません」
「では、誰を復活させるかは冥界玉を持った者の心によるというわけだな」
「はい」
不幸中の幸いとでも言うべきか。魔界に放たれた冥界玉は、魔界の者の手にある限り、冥界の王復活には繋がらないようだ。
「コエンマさま、冥界王の復活に至らなくても、長い時間放っておくわけにはいきません! 冥界玉の力は、冥界の封印を解くために外部から働き続けるんです。時間が経てば、冥界の封印が完全に解けてしまいます。冥界が復活すれば、人間界、魔界、霊界すべてが危険に晒されます!」
心の内に秘める負のエネルギーを司るといわれている、冥界の復活。それは絶対に避けなければならなかった。
「ひなげし、ぼたんを呼べ。もう一度、魔界に行くぞ」
コエンマたちは再び魔界へと向かった。