俺々シリーズ苛立ち編 『 折り紙札付きの話 』
この間ふと、そのこと自体が空しいような気持になり、釣り道具一式をそろえ(柄が伸縮型のもの)、一人で湖へ出かけた。釣ってもいないと言うが、魚を食うのが目的じゃなければいるらしい。釣り糸を垂らして数分で、なんか小鳥みたいなのが釣れたが、すぐに逃がした。それから、道具を隠して小舟に乗り込み、湖の真ん中まで出て行った。もう昔みたいに、日向ぼっこだけで幸せということもないのだろう。釣り糸は何度も食卓では見たことのない系のやつを吊り上げ、その度に俺は舌打ちした。ぐらりと船が揺れる思いに、湖の中に落ちてしまいそうになったが、こんなつまらないことで死ぬのも嫌すぎる。
もう20匹以上も釣れてる、そして逃げさせてる。俺は苛立ちながら単車のところまで帰り、不安定な奴しか愛さない、と呟いた。帰りはいつもより混んでいる週末の道を、ゆっくり背中と腰の運動みたいな動きを入れる走りで帰った。部屋に戻ると水槽が脳裏に浮かんだ。そうだ、今度何か持って帰ろう、そうすれば良かったな。だが心配だ、生きたやつを生け捕りにすると嫌なことがあるかも。クローゼットの中から折り紙を取出し、鶴を折った。千羽になったらやばい話、と俺はタイトルを口にして、この鶴が俺のために使われないように願った。
作品名:俺々シリーズ苛立ち編 『 折り紙札付きの話 』 作家名:みゅーずりん仮名