赤秋の恋(美鈴)
えぇ
[実は今のお店が居抜きで売りに出ているのです。買い手がいないと5月で解雇になります。お客さんはお金持ちでしょうから、500万円ですから、お買いになる気はありませんか?」
「素人の僕では赤字になってしまいますよ」
「私は店長ですから、私が責任は持ちます。年1パーセントの利息は最低保証します」
「現在利益はどのくらいあるんですか?」
「1日平均5万円くらいの売り上げはあります。粗利は半分です。4時間交代で4人パートの方がいます。時給は900円ですから、約15000円で、私が10時間勤務で1万円です。それと家賃が5万円、光熱費、水道など4万円くらいかかります。それらが日割りで4000円にして、29000円です。計算上では少し赤字になりますが、仕入れに変動があり利幅はもっと多いと思ってください」
「ギリギリなのか、それでオーナーは売りに出した訳ですね」
「正直な話そうなんですが・・・助けていただけませんか?」
「元金の保証がないですよね」
「それはですね。わたしと・・・結婚してください」
「えぇ。プロポーズ」
「1人だって言ったでしょう?嫌い・・ですか」
「好きですよ。好きです。フキノトウの天ぷらみたいに」
62年もの間独身でいたのに、なぜだろう。啓介は美鈴のプロポーズを受けてしまったのだ。
結婚は年齢でする訳ではないのかもしれない。少しの好きな感情とタイミングなのかもしれない。
「録画機は返品します」
「必要でしょう」
「だってさ、啓介さんがお話相手になってくれるでしょう」
「・・・・・」
「・・・・」
無言の会話は読者が想像してくださいね。