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いまの時代の映画ではない〜「バースデイ・ワンダーランド」

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立川シネマシティ「バースデイ・ワンダーランド」原恵一 監督の新作アニメーション映画をみた。

率直に言って、

「なんでこんな平坦なシナリオで二時間もやるんじゃ」

という作品だった。

期待して開映前にパンフまで買ったのだが、とてもあの傑作「河童のクゥと夏休み」を撮った監督の作品とは思えない。「カラフル」までは良かったが、「はじまりのみち」「百日紅」から本作まで十年ほど経過するうちに、失速してしまったのだろうか?

物語の要素はいろいろ盛り込まれているのだが、ストーリーテリングが直球過ぎるようだ。なおかつそれぞれの要素がうまく料理されているとは言いがたい。

学校や家庭の日常を描くシーンも薄いので、「河童のクゥ」のようにキャラクターの日常的な演技がじわじわと効いてくることもない。

ロシア出身であるイリヤ・クブシノブのキャラクターデザインは魅力的だが、主人公が小学生にはとても見えないのも気になる。

画面の演出もアレッと思うところがあった。「しずく切りの儀式」のときに主人公のアカネが王子に語りかける重要なシーン。アカネの顔がほとんど影になってしまっているのだが、それで良いのだろうか。

それにしてもなぜこんなにストーリーテリングが弱いのだろう? ちょっとでも複雑な伏線や演出は日本の観客には分かりにくいとされて、企画段階でそういったプロットが排除されてしまったのかもしれない、と思わず邪推してしまいそうになる。

だが現在、シナリオを緻密に練り込んだ作品がこれだけ評価されている時代に、そんなことをするのはコンテンツの自殺行為でしかない。

たとえば本作には砂嵐のシーンや、水源を求めるテーマ、高速ドライブというモチーフがある。これは「マッドマックス 怒りのデスロード」にも共通している。またいろんな町を辿ってゆくシーンなどは、例えば「ズートピア」を思い出させる。

「怒りのデスロード」「ズートピア」はいずれも有名作であり、シナリオを綿密に織り込んだ作品である。そのため、観客も多く、何度も繰り返し観ている人さえいる「定番」になっている。

なので、似たようなモチーフを採用する場合には、何か違った味を出す必要があるだろう。そこが作品のオリジナリティであり、キモだといえる。しかし本作にはそれはない。

つまり、本作は「怒りのデスロード」「ズートピア」のような作品が跋扈する時代の映画観客に向けられた作品ではないということだろう。「いまの時代」の映画ではない。かといって、古い映画の長所を活かしているようにも思えないのも残念なことであった。

原監督はどこにゆくのだろうか。