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今よりも一歩前へ ~掌編集・今月のイラスト~

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 堅物の和男とて、小夜子の容姿に心奪われていないわけではなかった、四年も一緒にやって来て小夜子が勉強熱心な頑張り屋であり、小さい頃を寂しく過ごした経験から人の気持ちを良く察することができる優しい性格の持ち主でもあることも知っている。
 当然、女性として意識していないはずもなかった。
 
 和男は数秒だが目を閉じ、心を落ち着かせてからこう言った。
「告白するよ……俺は小夜子が好きだ、心根も容姿も、頑張り屋であることも全部ひっくるめて……小夜子の全てが好きなんだ、だから小夜子がその衣装でステージに出るのは、その恰好をたくさんの人の目に晒すのは、正直なところちょっと抵抗があるんだ……でも、小夜子が容姿に悩んで、演劇や音楽でその殻を破ってきたことも知っている、その衣装でステージに出ることが小夜子にとってもうひとつ殻を破ることになるんだったら、僕は止めない……どうする?」
「私……このデュオで成功したいの……自分のためにも、あなたの為にも……自分の容姿がその助けになるんだったら何でも平気……」
「わかった……必ず成功しような」
 和男はそう言って小夜子を抱きしめた……そしてその銀色の髪の匂いを、褐色の肌の感触を体全体で受け止めた。

 フェス当日、大きな会場なのでまばらに見えるが、今まで経験したことのない数の聴衆を舞台袖から伺い、和男はもう一度小夜子を抱きしめた。
「必ず成功しような、小夜子の思いと決心を無駄にしないように」
「うん……ずっとこのデュオを続けて行けるように」
「そうだ、ずっとだ」
「ずっとよ」
 和男は小夜子の体を離し、両肩に手を置いてそのオッドアイを真正面から見据えた。
「行くぞ!」
「うん! 行こう!」

 そして、二人は聴衆の前へと駆け出して行った……。


(終)