沈む町
真昼だった。
空はまっ青で、積乱雲が立ちあがっている。
太陽は高く照りつけていた。
強い風が吹いている。風切り音がひっきりなしに聞こえる。
田んぼの中には鉄塔がいくつか立っており、多数の送電線がそれら鉄塔のあいだをわたっている。
水面にはさざ波が立っており、ときどき陽光を反射して光った。
水没したあぜ道の脇、雑草がゆらゆらと揺れている。
西の方向、さらに遠く離れたところに、水没した街並みがあるのが見えた。
住宅や小さなビル、神社や集会所などの建物。いずれも建物の土台から一階部分がすっかり水に漬かっている。
どうやら向こうの標高は、こちらの住宅街よりも随分低いようだ。
ぼくは階下に降りた。
水はいつの間にかひいていた。数時間前には階段のすぐ下まで水面が来ていたが、その後かなり水位が下がっている。
一階の床は泥だらけであったが、少しずつ乾燥し始めていた。
玄関からも水は抜けていた。
泥で汚れた靴が散乱し、三和土のコンクリートは湿っている。
ぼくは裸足にサンダルをつっかけて、外に出た。
これからどこへゆこうか。