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山之内洋一
山之内洋一
novelistID. 66555
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傷だらけの天使

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彼岸花が、夕暮れの切ない風に揺れていた。



ショーケンは帰って来た。
「兄貴、どうだった?」
「次の駅の紀伊神谷まで、クルマで送ってきてやった」
「それは良かった」
「ついでだから、買い物してきたよ」
「コンビニ?」
「郵便局近くの、かつまやっていうスーパー」
「そんなところがあるんだ」
「コンビニは、ファミリーマートがあるんだって」
「そう、何買ってきたの?」
「高野山だから高野豆腐だろう、野菜やシイタケ、肉」
「高野豆腐ねえ」
「高野豆腐は、武士が戦のときに食べてたんだぞ」
「へ~~え、そうなの」
「栄養があるんだよ」
「お米、買ってきた?」
「ああ、買って来たよ。食パンも買って来たよ」
「それは有難い、兄貴は食パンは食べないもんね」
「りゅうちゃんは、米もパンも食べないんだって」
「えええ、どういうこと?」
「米や小麦粉は、健康に悪いんだって」
「じゃあ、ラーメンやうどんも?」
「そうらしい」
「凄いねえ~~、何を食べてるの?」
「豆腐、野菜、肉や魚とか言ってたな」
「炭水化物は?」
「芋とかカボチャとかだって」
「へ~~~え、驚き桃ノ木」
「バターもマーガリンも悪いぞ」
「じゃあ、何つけて食べるの?」
「そうだなあ、マヨネーズかな?」
「パンにマヨネーズ!」
「チーズやハムとか目玉焼きとかレタスとか、挟めばいいじゃないか」
「う~~ん、それいいかもね」
「納豆もいいんじゃないか?」
「いやだよ、そんなの」
「贅沢な奴だなあ」
「そりゃあないよ」
「高野山に来たばっかりなのに、今日は、いろんなことがあったなあ~~」
「そうだねえ、人生は謎だらけだねえ~~」
「おもしろいこと言うねえ」
「弘法大師になっちゃった」
「弘法大師?」
「高野山の町はねえ、弘法大師がつくったんだよ」
「へ~~え、そうなのかよ。大工さんかと思った」
「そりゃあ、そうだけど」
「弘法大師って、お坊さん?」
「うん、そうだよ」
「弘法も筆の誤りって言うからな、かなりの有名人だな」
「昔の有名人」
「おまえ、中卒なのに詳しいじゃん」
「ここに来る前に勉強したもん」
「あっ、そうだ、ビールを忘れた、買ってくるよ」
「ノンアルコールビールね」
「あれ眠れるんだよ。自転車で行ってくる」
「俺にも」「分かった」
「なんか適当に作っておくよ」
「頼む」
高野山の鐘が五時を告げていた。
「やっぱ、高野山は、標高が高いだけあって、寒いなあ」
近くの転軸山公園には、真っ赤な彼岸花が、夕暮れの切ない風に揺れていた。




作品名:傷だらけの天使 作家名:山之内洋一