原点回帰だ! ライダー!
地獄大使が声を張り上げると、緑色に濁った沼から怪人が姿を現した、その肌は沼と同じような緑色、保護色にして隠れていたのだ。
「ガマガッパだと!?」
「半分ガマガエル、半分カッパのハイブリッド怪人だ!」
ハイブリッド怪人・ガマガッパ、その基本的なフォルムはガマ男同様のものだが、頭に皿を備え、硬そうな甲羅を背負っている、そしてその肌はイボイボが残るものの緑色をしている、カッパ男のポップなキュートさはなく、ガマ男の気色悪さも希薄になってしまっている。
「地獄大使! カッパ男もガマ男も俺に倒されたのを忘れたか?」
「ふん、カッパ男は知らんわ、ヤツは死神の手下だったのでな。 ガマ男は確かにワシの部下だったが、ガマ男は貴様に倒されてなどおらん、武道館のトイレで大きな鏡を持った清掃員に囲まれ,脂汗を流しすぎて干からびただけだ(『踊れ! ライダー!』参照』)、戦闘力では貴様に勝っていただろうが!」
「確かに苦戦したことは否定しないさ、だが、鏡に囲まれただけで干からびるのもどうかと思うが」
「うるさい! あの時、裏切り者のマッスルがしゃしゃり出て来さえしなければ、貴様を倒せたはずだったのだ、だが今日は加勢を見込めんぞ、しかもここには鏡などない! 貴様の敗北は決まったも同然だ」
実はマッスルとレディ9は別な場所で戦闘中、ライダーマンと晴子もショッカーが関与していると思われる怪奇現象の調査に出かけたばかり、その隙を狙うようにして地獄大使が騒ぎを起こした、ライダーチームの人数が増え、ショッカーもあの手この手で分断を図っているのだ。
……別に大人数を一度に扱うのが苦手な作者の限界のせいではない、断じて……強いて言うならば原点回帰である(キッパリ)。
「むふふ……ガマガッパ、まずはライダーを魅惑してやれ」
「その姿で魅惑だと? ゲテモノ趣味はないつもりだが?」
「これでもそうホザいていられるかな?」
ガマガッパがその体からキュウリの香りを放ち始める、それはかつてカッパ男が使った戦法、バッタの遺伝子を持つライダーをその香りで惹きつけ、ふらふらと近寄って来たところを攻撃しようと言うのだ。
カッパ男はライダーの噛みつき攻撃に屈して食われてしまったが、ガマガッパはカッパ男より数段体が大きくパワーもけた違いだ。
だが……。
「どうした? ライダー、キュウリの香りは貴様を惹きつけるはず……」
「確かにこの香りには誘惑されるさ、だがガマガッパの姿を見れば食欲も減退すると言うものだ」
「うぬぅ……ライダーよ、それはヘイトスピーチではないのか? 良い子には聞かせられぬではないか」
「ヘイトスピーチだと? 相手は悪の秘密結社の怪人だぞ? はっきり敵対している者に対してヘイトもなにもあるものか」
「ぐぅ……キュウリの香り攻撃は効かんか、ならばこれだ!」
「うっ……頭の皿手裏剣か! カッパ男のものより数段速い! ぐぁっ! なんだ? この変化はまるで俺の体に向かってくるように曲がって来る」
「わはは、ガマガッパにはスポ根男の遺伝子も組み込んだ、大〇ーグボール一号も駆使できるのだ!」
「くそっ、こいつは厄介だ、一枚一枚叩き落すしかないな、うぐっ!」
「ホラホラ、大リ〇グボールは一号だけではないぞ、消える魔球、いや、消える皿攻撃もあるのだ」
「これは……」
「今だ! ガマガッパ!」
「あれか!」
ガマガエルの動作は機敏とは言い難い、それを補うために長い舌を自在に操る能力に長けている、日本武道館での戦闘でガマ男の伸びる舌攻撃を見切ったものの、戻る舌に絡めとられて危機に陥った記憶がライダーの脳裏に蘇る。
「同じ手は食わないぞ!」
「ほう、ジャンプで避けたか、さすがだ、ライダー、しかしいつまで避け切れるかな? ガマガッパ、伸びる舌と皿手裏剣のハイブリッド攻撃だ!」
「うおっ!」
伸びる舌に神経を集中すれば皿手裏剣への備えがおろそかになってしまう、危うし! ライダー!
「わはははははは、愉快々々、ライダー、この沼が貴様の墓場になるようだな!」
「ぬかせ! 俺だって以前の俺ではないぞ」
「ぎゃあ!」
悲鳴を上げたのはガマガッパの方だった。
「な、なんと! 凶器攻撃だと?」
「ああ、マッスルに教わったのさ」
「せ、正義の味方が凶器攻撃を使って良いのか?」
「正義を守るためには綺麗ごとばかりは言っていられないさ」
ライダーが使ったのは長さも太さも五寸釘の倍ほどもある瓦釘、それでガマガッパの舌を立ち木に打ち付けてしまったのだ。
「そ、そんなものを一体どこに隠していたと言うのだ」
「その質問に答える義理はないな……別に作者が思いつかなかったわけではないぞ」
「それは怪しいものだが……ええい! ガマ男、こうなったらアレを使え!」
ビュッ!
「おっと、見当はついていたよ、毒液攻撃だな、木を溶かすほどの毒性は大したものだが……何? 木を溶かすだと!?」
「わはははは、そうだ、狙いが貴様だと言った覚えはない、立ち木に舌を釘付けされてしまっても木そのものを溶かしてしまえば何と言うことはないのだ! 行け! ガマガッパ、お前の怪力を見せつけてやれ!」
ガマガッパは沼から上がって、その巨体で突進して来る。
「うぬぅ……こいつにパンチやキックは通用しない、ぶよぶよの体で衝撃を吸収されてしまうからな……いや、待てよ……弱点があったぞ、とうっ!」
「ジャンプして背後に回ったか、だが見ろ、ガマガッパは固い甲羅を背負っているぞ」
「そこが弱点だと言うんだ!」
「何っ!」
「ライダー! 横蹴り!」
「ぎゃっ」
ライダーの蹴りが炸裂すると、固い甲羅は衝撃を吸収できずに、ガマガッパはたたらを踏んでうつぶせに倒れた。
「もう一つの弱点は……ここだ!」
「な、なにをする気だ?」
ライダーは甲羅に馬乗りになると首の赤いマフラーを解いたのだ。
「お掃除さ」
「あっ……」
マフラーで頭の皿を綺麗にカラ拭きすると、ガマガッパの体から力が抜けて行く。
「しまった……」
「ははは、ハイブリッド怪人とは考えたものだが、攻撃手段が増えたのと同時に弱点も増えていたようだな……とうっ! ライダーキック・ユヅルスペシャル!」
高くジャンプしたライダーは4回転を加えた踏みつけキックでガマガッパを地面にめり込ませてしまった。
「マッスルたちをおびき寄せる囮に戦闘員を使ったのが仇となったな……来い! 地獄大使! 一対一の勝負だ!」
「ふん……ワシがそんなに不用意な男に見えるか?」
「ところどころ抜けているようにも思うが」
「うるさい! 少なくとも今日は二の矢を用意しておるわ!」
「まだ沼に隠れているのか? ワニ男二号ではあるまいな」
「それも死神の部下だ! ワシの怪人はもっとダイナミックだ、いでよ! 沼男!」
「沼男だと? おおっ、何だ? 沼が盛り上がって行く!」
「この沼そのものが怪人なのだ、沼男の体内に取り込まれたが最後、貴様は窒息死するのだ! 行け! 沼男!」
予想もできなかった巨大な怪人を前に、ライダーは身構えた。
(まだ見ぬ6月のお題に続く……ええ、どんなお題であっても、何としても続けて見せますとも<(`^´)>)
作品名:原点回帰だ! ライダー! 作家名:ST