図書館の本を濡らしたら
気がかりなのはその中に図書館で借りた本が二冊入ってることだ。けれどもまあ、この降りならばたぶん大丈夫だろう――そう思ってペダルを漕いで走り出した。
大丈夫じゃなかった。たちまち雨足が強まって、ザーッという物凄い降りになってしまった。帰り着いたところで見ると二冊ともページに水が染み込んでゴワゴワになってしまっている。
明らかに二度と棚には置けないレベルだ。さてどうなるんだろう。謝れば許してもらえるんだろうか。それとも、弁償させられるのか。けど弁償と言ってもな……。
値段を確かめてみた。二冊合計三千六百円ばかり。しかしどちらも数年前に出たもので、おれが読んだ限りでは内容は既に古びているように感じた。
などと言っちゃいけないが、しかし図書館の本なんて特に資料的価値がなければ十年くらいで廃棄されるのが普通だろう。
その二冊はどう見てもあと数年で捨てられそうなものなのだ。なのに全額弁償になるのか? それはちょっとな、という気がした。半分の千八百で許してもらえないもんかな。
そんなことを考えながら梅雨の晴れ間に恐る恐る返しに行くと、言われたのは思いがけない言葉だった。
「これですと、
作品名:図書館の本を濡らしたら 作家名:島田信之