街コンの夜①
盛り上がりもピークを越えかかった頃合いに、宣伝文句の「素敵な演出」の一環なのか、微妙な盛り上がりを見せた景品付きの全員参加型のゲームを挟みつつ、店内は方向性を失ったままダラダラと時間だけが過ぎて行った。
「はい!皆さま、お楽しみ頂けているでしょうか。ラストオーダーまで残り10分となっております!尚、この後は二次会の会場も手配しておりますので、皆さま奮ってご参加ください!」
前触れなく、吉田の声がマイクを通して再び響き渡った。
とたんに会場内は急速に現実味を帯びていく。
「今、9時か…」
4人組の青年が、腕時計に目をおとす。
小柄な女性は同じ卓の女性に、この後の予定を委ねるように尋ねる。
「リカコさんは…行かれますか?」
「あたしは行こっかな。まだ終電まで時間あるし。アヤちゃんはどうする?あんた達は勿論来るよね!?」
鋭い眼つきで人差し指を男性陣にビシッと突きつける。
年下の若者は、諦めたようにガックリと肩を落とした。
「は、はい…」
「やれやれ、オッさんにはツライねー」
「皆さんが行かれるのでしたら、私も参加したいと思います」
吉田が手際良く会場名で人数の確認に回ると、再びスマートフォンでどこかに電話を掛けた。
やがて了解が取れたのか、参加者に大きな声で呼びかける。
「では、2次会に参加される方はこれより移動となります。私の後について来てください」
顔を紅潮させた客達が一人、また一人と店外へと促されると、そのまま帰宅の途につく者や、個別に2次会へ誘う事に成功した男女、今夜の反省会に向かう同性コンビなどが散り散りに夜の街に消えていく。
2次会組は人が混み合う繁華街を掻き分ける様にゾロゾロと進む。今夜知り合ったばかりの男女達は、日常と夢の狭間を行き交う様にフワフワと足取りは軽い。
先頭を進む吉田は、相変わらずスマートフォンを片手に電話先の相手と会話を続けながら、足早に次の会場へと歩を進めていた。