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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「美那子」 未来 一話

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休みをとった日曜日に美樹は美那子と着物売り場にやってきた。
なぜか本宮課長がそこで待機していた。

「ようこそお越しくださいました」

担当店員が挨拶をする。本宮が続けて挨拶をする。

「さすがに永田さんのお嬢さんだけあって美人だ。今日は素敵なお着物を選びましょう」

美那子は二人の関係を兄から知らされていたので、出来るだけ笑顔を作って返事をした。

「よろしくお願いします。とても楽しみにしていました」

「美那子さんと言われるのでしたね?私と担当が選んだものがここに掛けてあるのですが、いかがですか?」

それは黒地に鮮やかな赤の花柄が散りばめられた、美那子には派手過ぎると感じられる一品だったが、着付けてみると恐ろしいほど似合っていることに美樹も選んだ本宮も正直驚かされた。

「とてもお似合いですわ。はっきり言ってこの柄を着こなせるお客様はこれまでいなかったので、本当によかったと思います」

それは担当者のお世辞ではなく、やったと言う感じの気持ちが強かった。
本宮は自分の外商カードで買えばいいので20%引きになると言った。
美樹は感謝して代金を支払うと、仕立て上がりが待ち遠しいと娘のような気持ちになっていた。

帰り道美那子が本宮について話してきた。

「お母さん、今日はありがとう。素敵な着物だったわ。本宮さんってセンスいいのね」

「そうね、あの方定年過ぎているけど再雇用で重用されているぐらいできる人なの。お蔭さまって言う感じよね」

「お母さんだから安くしてくれたのよね?」

「うん、同じ会社だからね。社員割引って言う制度を使えたの」

「もっと他にも理由があるんじゃないの?まあいいけど」

「何だか嫌な言い方ね。はっきりと言ったらどうなの?」

「彼なんでしょ?すぐにわかった」

「彼?どうしてそんな風に見るのかしら」

「お母さんもあの人も顔に出るタイプだからバレたのよ」

美那子は兄から聞いたとは言えなかった。美樹は直ぐにピンと来たが知らない素振りをした。