Aprikosen Hamlet ―武蔵野人狼事変―
寿能城代の携帯電話から、発信位置情報を特定した同盟軍は、磐座但馬守(いわくら たじまのかみ)を指揮官とする突入部隊を出撃させた。
磐座但馬守
「寿能城代からの情報によれば、﨔木は他のメンバー達を人質に取り、廃墟『アプリコーゼン ハムレット』に籠城していると推測される」
「また、﨔木長門は、塔樹無敎から奪った『レールガン』と呼ばれる小銃で武装している可能性が高いです」
入谷枯桐「人質救出に必要と判断した際は、発砲を躊躇うな!」
十三宮聖「一人でも多く…いえ、夜慧様を含む全員の無事を祈り、この『魔女裁判』を終わらせましょう!」
間もなく、突入の合図が交わされた。
「発砲許可! 突入しますっ!」
磐座但馬「武器を捨てろ、﨔木!『オオカミごっこ』は、もうお仕舞いだ!」
入谷枯桐「この部屋にも居ない、か…妙だな、人質の姿が見当たらない。司教、そちらはどうだ?」
十三宮聖「夜慧様を保護しました! ですが…」
「姉さん、どうしたの?」
室内には、﨔木長門の姿しか見当たらない。そこに居るはずの生田兵庫・斎宮星見・美保関少弐・寿能城代は皆、忽然と姿を消してしまっていた。ただ、塔樹無敎の消失とは別に、何者かが争った形跡が残っている。これは…。
﨔木夜慧「…ぁ、あっ…」
磐座但馬「人質が全員失踪だと! これは一体、どういう事だ?」
入谷枯桐「この密室で、何があったのか? 長門よ、本当の事を言うのだ!」
﨔木夜慧「…ぅ、ぃ…い、や…」
十三宮聖「夜慧様の御心は今、極度の錯乱状態にあります。無理に聞き出さんとせぬほうが良いでしょう。夜慧様、私達が来たからには、もう大丈夫ですよ…」
﨔木夜慧「…本当に、居た…ん、だ…」
「居た?」
﨔木夜慧「…そ、こに…居た、の…本、物が…」
入谷枯桐「本物だと?」
﨔木夜慧「…ほ…本物の…人狼が……に…居て……を…」
磐座但馬「変な事を言ってないで、早く人質の居場所を教えてくれ…オオカミごっこは終わったんだぞ?」
﨔木夜慧「…終わって…ない…これは…本当の……の…始まり…み、んな…殺される…!」
作品名:Aprikosen Hamlet ―武蔵野人狼事変― 作家名:スライダーの会