お姉さんは好きですか
一緒にお風呂に入る。
「お姉、もっと優しく洗ってよ」
「優しくやってるよ!」
頭を洗ってもらって、二人は隣同士の家。
本当の姉妹より仲の良い姉妹みたい。
お姉が好き。
ずっと好き。
ずっとずっと守ってくれる人だって思ってた。
「お姉ぇ~…イジメられたぁ~!」
泣きつけば涙を拭ってくれる。
「もう、そんなに泣かないの。頭撫でてあげるから」
お姉の撫でてくれる手が好きだった。
お姉の膝枕も、優しく囁いてくれる声も…。
ずっとずっと一人占めできる人だって思ってた。
違うって気付いた。
ランドセルからセーラー服、ブレザーへと変わる。
私の心も変わる。
お姉と私は一緒で、お姉と私は一緒になれない。
そんな嫌な常識なんてものを私は知った。
だけど、どうしても追いかけてしまう。
生き方も真似して、同じ場所へ同じ場所へと私は進んでいく。
仲が良い姉妹より姉妹らしい二人。
だけど、それが愛になったりはしないの。
だって“そんなの、おかしいから”の一言で終わる。
でも追いかけたい。
一緒で居たい。
一緒に居たい。
「…ごめん、一緒に帰れないの。先に帰って?」
「うん…わかった」
良い子ぶった。
悔しくて、この後走って帰るくせに、私はお姉の前で良い子ぶった。
知ってるよ…お姉は私より大切な人が出来たんだ。
知ってるよ…家族はいつまでたっても家族だけど、いつかは離ればなれになる事。
知ってるけど…悔しい。
お姉はいつまでたっても私のお姉で、ずっとずっと一緒で、ずっとずっと私を守ってくれる人だって思ってた。
けど、本当はお姉は守って貰う人だった。
私じゃない誰かに、守って貰う人だった。
じゃあ…私は誰に守ってもらえばいいの?
じゃあ…私は誰に縋れば良いの?
落ちた涙に祝福を。
貴女の笑顔に祝福を。
もうサヨナラしなくちゃ…。
だけど、お姉が泣いていた。
何でも無いと泣いていた。
どうして慰めるのは私の役目じゃないんだろう。
どうして私は慰めてもらったのに、慰めるのは私の役目じゃないんだろう。
私だったら、お姉を泣かせたりしないのに…。
「お姉…あのね?」
「私なら大丈夫だから…」
こんなに近くに居るのに、今まで、あんなに近い存在だったのに、今は凄く遠い。
大丈夫だって、私を遠ざけないで。
私の胸に甘えて欲しい。
私だって大人になったのに…同じだから甘えてもらえない。
私だって大人になったのに、支えてあげられない。
だからサヨナラしなくちゃ…。
幸せな笑顔も、その涙も好きだけど、私は貴女を守れない。
END
作品名:お姉さんは好きですか 作家名:櫻都 和紀