お姉さんは好きですか
「二人で飲むお酒が、やっぱり一番だね」
貴女が笑いながら言った。
「そうかもしれない」
私は、それに答えた。
でも、それは本当?
うん…これは本当。
「仕事が忙しくてなかなか逢えなかったから、本当に二人きりの時間が貴重って再認識したよ」
「本当に。嫌われたのかと心配するほど」
「…疑ってるの?」
「まさか…」
「あはは、そうだよね」
笑顔の裏には何があるんだろうな。
そうやって、笑顔で誤魔化してる。
笑顔が増えれば増えるほど分かる。
貴女の嘘。
それを見ないふりするのが私の仕事。
唯一、貴女と私を繋ぐ努力。
「…ねぇ、抱いて?」
「お酒が入ると我が儘…」
「嫌?」
「嫌なら一緒にお酒なんか飲まない」
「だよね」
笑顔。
その笑顔の裏には何がある?
繋ぎとめられるなら、繋ぎとめてみせて…という貴女の強気。
貴女の肌はとても綺麗。
綺麗だけど…ほら、汚れてる。
私ではない、誰かの痕。
それに気付かないふり。
気付いてしまったら終わってしまう。
もしかしたら、これが私の出来る唯一の我が儘なのかもしれない。
甘い声は今でも私の心をくすぐる。
気持ち良いトコロにコトンと入ってくる。
「やっぱり一番愛してる」
貴女が笑う。
私も微笑み返す。
体を重ねたばかりなのに、足がもつれ合う。
貴女の全てが私の気持ち良いトコロにコトンと納まる。
このままずっと…騙し続けて。
本当は言わないで…。
不毛な恋を嘲笑う男など全て消え去ってしまえば良い。
貴女の中から。
この願いが届かないならせめて…私を騙し続けて。
私には貴女しか居ないから。
私は、どうしても貴女しか愛せないから。
騙して貴女の本当の幸せを私に見せないで。
裏切り続けられても構わない。
貴女さえ居れば、他には何もいらないの。
END
作品名:お姉さんは好きですか 作家名:櫻都 和紀