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お姉さんは好きですか

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車は恋人?
車が恋人?

ついつい遠くまで来てしまった。
まだ泳ぐに至らない春の海は、少しだけ暖かくなった風に乗せて潮の匂いを私に届ける。

泳がなくなって、どれぐらいになるだろう。
もう、海はすっかり眺めるものになってしまった。
泳ぐという事をしなくなったのは、いつからだろう。
君が助手席を降りたあの日から…だ。

自分の性格は男前だと思っていた。
どこの、どんな男より私の方が男前だと思っていた。
君が居なくなる前までは。
今では、こんなにも女々しく君の帰りを待っている。
助手席は空いたまま。
君の好きだった海を眺めて、また来た道を帰る。

君が求めたものが、私には分からない。
私は、あの日まで満足すぎるほど満足できる日々を過ごしていたから。

ねぇ…君は私に何を求めていた?

夏の近づく風は、暖かさを届けて私の車の中で舞うように遊んでは出て行く。
まるで君の笑顔のように優しくて、だけど懐かしさばかりを呼ぶ。
過ぎて行く景色はまるで過去を映し出すかのように過ぎ去り、日常に戻っていく。

君が好きだった。
けど、君との思い出はまるで、夏休みの記憶。
懐かしいだけで戻らない遠い日々。



END