お姉さんは好きですか
傷付かないよ
ホントウじゃないから
女同士だもん
何したって傷付かない
トモダチじゃん
傷付かないよ
君は笑ってた。
別れの間際もクルクル回って、いつも通り。
「ゴメンね」
呟いた私の言葉は君に届いてたのに、君は拒絶してるみたいだった。
「別に、明日も同じ風に話しかけても問題ないんでしょ?問題ないよね?」
じっと止まる事を知らない君は、いつまで経っても子供だった。
私は、そんな君がいつだって心配で、いつも隣に居た。
ううん…違うよ。変わってくの。
そんな言葉は、きっと君には届かない。
だから言わなかった。
「別に平気だよ?平気平気。だって、ちょっと前に戻るだけじゃん。戻るだけでしょ?」
「そうだね」
危なっかしくて、誰かが止めてあげないと危なっかしくて…。
私が付いて居ないと駄目だと思っていた。
だけど、私の本当に求めていたモノは君の保護者である事では無くて、私が求めていたのは愛だった。
その愛する相手は君じゃなかった。
私は包んで欲しかった…誰かに。
その相手が現れてしまった途端、君との恋愛ごっこの熱が急に冷めた。
私は君に縛られている事が嫌になった。
だから言った“さようなら”
君の返事は“それでも友達だよね?”
どこか、ずれていた。
それでも私は君の呪縛から解き放たれるなら、少しぐらいのずれなんて良いと承諾した。
私たちの関係は、これで終わって、私たちは変わっていく。
そう信じていた。
だけど、私の愛を理解できるほど、君は大人では無かった。
「ねぇねぇ、私も行って良い?一緒に行っちゃダメ?」
私の彼と、私が一緒に居る時も、君は私の側に居て、私の彼は苦笑いを浮かべた。
同い年の妹みたいだと笑ってくれていた。
私と彼と、その間に居る君。
君は変われない。私に依存し過ぎている。
「ねぇねぇ、私も…」
「もういい加減にしてよ」
私の言葉に君は目を丸くした。
「え?」
「私は私の恋人と行くの。私と私の彼との間に貴女は邪魔なの。いい加減、気付いてよ」
「…え?」
「こんなの友達じゃないよ。私と貴女は友達で、私と私の彼との関係は恋人なの。貴女は邪魔なの。わかる?」
「…なんで?なんで邪魔なんて言うの?何で邪魔とか言うの?」
「変わったの!私と貴女とは、もう違うの」
「いつだって側にいてくれたじゃん…いつだって側に居ても許してくれてたじゃん…。何で?なんで急にそんな事言うの?なんでそんな風に言うの?」
「理解できないなら友達も止める!もう付いて来ないで!!」
「なんで?なんで?」
「付いて来ないでッッ!!」
すがる君の手を振り払った。
今までの私では考えられない、君を睨むという事をした。
でも…こうでもしなければ、君は変われない。
いつまでも恋愛ごっこを引きずって、君は変わらない。
一人寂しそうに私を見る君を置いて、私は歩きだす。
君が泣いていた。
でも、もうそれは私の知った事ではない。
私は私の幸せがあって、君は君の幸せを見つけるべきなんだ。
私は変わっていく。君も変わっていくべきなんだ。
私は私の幸せの為に、君に世の常識を押し付けた。
いつだって危なっかしくて、少し常識から外れてて、私が側に居ないと駄目な娘で、私はいつだって貴女の為に生きていた。
私が私の為に生きては駄目なの?
私が私の幸せを追っては駄目なの?
私は………
私は、その日から君を避けるようになった。
私の彼は、私が彼女を急に避けるようになったのを心配してくれたけど
私と、あの子とどっちが大切なの?
そう言えば、何も言えなくなった。
私は私の幸せが欲しい。
私は、私の幸せを、あの子に奪われたくない。
私は………
私は彼女の幸せを考えてあげた事があった?
姿さえ見なくなって、いつしか忘れて、私は私の生活を楽しんでいた。
両立できない本当の恋愛と恋愛ごっこ。
私は本当に大切だと思っていたモノは何だった?
私の欲を満たすことだった。
あの子は何をしてる?
考えもしなかった。
いつまでも変われない彼女の子供の様な本当の愛は、いつまでも私に向かい続けていた事。
あの子が私を信じていた事。
あの子にとって私が全てだった事。
あの子が笑って私と別れた本当の意味。
あの子なりの、精いっぱいの優しさは、大人になっていく私には届かない。
あの子を壊して、私は女になっていく。
捨てられた子供の絶望など気にすることなく。
END
作品名:お姉さんは好きですか 作家名:櫻都 和紀