【短編集】人魚の島
「そんなことはありません。これは書物から得た知識に基づく合理的な到達方法です」
「……あんた、絶対におれのことをバカだと思ってるだろ?」
「実際問題として、これしか方法はないのです。わたしたちは鳥のように空を飛べないのですから」
「食糧や水はどうすんだ?」
「船の備蓄を分けてもらいます。わたしの計算が正しければ、二日もあれば〈人魚の島〉に到着するでしょう」
「そこはあんたの計算どおりだったとして……二日もあんたといっしょにボートのなかで過ごすのか?」
「はい。それがなにか?」
「おれはそこが一番の問題点だと思うぞ」
「なぜです?」
「なぜって……おれはだな、その……」
「わたしはダンのことを信じています」
「…………」
「お風呂に入っているわたしをのぞき見しましたけれどね」
「全然、信じてねえじゃねえか!」
「さっそく、わたしたちを乗せてくれる船を探しましょう」
「おい。本気なのか?」
当然のごとく──ティアナは本気だった。