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とーとろじい
とーとろじい
novelistID. 63052
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磨き残しのある想像の光景たち

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母が私をどこに発見しようと、私が私をどこに発見しようと、そうして、私が思い出の中にある他者からの評価をすっかり忘却し、自分の輪郭を形成できず、自分のあり方のまだ見ぬ可能性、その糸口さえ失ってしまったとしても、何とも不思議に思わない自分がずっと胸の底で乾いた目を見開いているようだ。
「何も不思議なことではない……私がどこにいようと」
自分の身に何が起ころうと、どうすることもできない。そんな不能感が私をずっと引き連れてここまで来たのだ。社会的な関係を何もかも喪失していると知りながら、それでもこの私を頑なに所有し続け、そして「管理しきれないな」と半ば放擲し誰かに売り渡そうかなどと考えてさえいる、余裕ありげな、私に対する無関心さをもった私、その驚くほど澄み切った平静さ。自分はいつまでもこいつであり続けるしかない。無動作なこいつで。
母の目を借りて、スーパーにいる私を想像する。ありありと想像できる。赤い色褪せたカゴをお腹にくっつけて、白い照明を浴びた色白のゴツゴツした横顔、眉間にシワが寄ってその影に紛れた細い目、身長170メートル、おまけに付いてきた細い足。所々ヒビが入って隙間がえぐれた茶色い床に、すぅと伸びている影。幽霊の影。まるで他人みたいだ。他人の影みたいだ。でもお前の方がよっぽど人間っぽい。私よりもよっぽど実在している。お前は私と母の願望の所産だ。望まれるべき私だ。お前の影は私のより健全で、人間らしい。

スマホの平板に指を押し付けて文字を打っているこの男を、私はどうしていいのか、全くわからない。こいつを私はどうすれば。

この身体は墓石だ。墓石はもう動かない。私は幽霊になる。幽霊として在ることを命じられている。幽霊になった私はより実在的になる。もう外に出て、社会生活をしている。紙幣が私を生かし、紙幣のために働く。紙幣はただの紙切れなのに、紙切れのために生きることで、私は社会体になる。それは幽霊だけの世界に幽霊として参画することと同じだ。幽霊の指はここにある親指よりも血が通って生き生きしている。影のついた私が目の前で白く輝いている。この照明の中に私は気持ちよく吸い込まれていく。気持ちよく。スーパーの光の中へ。窓をまたぐように。ゆっくり。上半身を投げやって。気持ちよく。
そんな感覚のまま永遠にぼんやりしている。