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とーとろじい
とーとろじい
novelistID. 63052
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磨き残しのある想像の光景たち

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「だがそんなこと、あるはずがない」
ゴミ収集車の去る気配がし、そのままゆっくり遠ざかっていく。
運動部の掛け声はいつのまにか消えていて、住宅街は普段の様子に戻ろうとしている。それは何だか拍子抜けするくらい、あっという間の変化だった。
自分がひどい汗をかいているのに気づいたのは、しばらくしてからだった。
変な妄想をした。妄想をしたことさえ、夢の中での出来事だったのではないかと、そんな風に考えるのも無理はなかった。一連の妄想はリアルな実感を残していて、それは夢の生々しさによって処分されるべき気持ちの悪い後味だった。第一、この疲れた体では、何もかもが夢のように曖昧だった。
もしかするとゴミ収集車もまだ来てないのではないかと思い、カーテンの隙間からぎこちなく外を覗いたが、それは残念ながら現実に違いなかった。
空は白く雲がかかっているが、昼間になれば晴れそうな明るい空だった。そして眼下の景色も何ら変わったところはなかった。
一度外を確かめると、気持ちはすっかり落ち着いた。
駐車場の入り口にある、一本の細い木に、しなびた紅い葉が付いている。それが有るか無きかのそよ風に揺られて、いま、落ちた。
その葉は、車道と駐車場との間にある、側溝の白いふたの上で、微動だにせずじっとしていた。ちょっと横に転がれば、ふたの口へ落ちてしまう、ギリギリの位置にいた。紅い葉は小さくて、見続けていると時々視界がぼやけてくるのだった。瞬きをしてその葉の様子を見守っていたが、ちょっとゆっくり瞬きをした隙に、その葉は、落ちたのであろう、その場から姿を消していた。
と、その刹那だった。
側溝の上を大きな赤い塊が覆い、その塊は斜めに一直線に、駐車場の中へと侵入してきた。無音だった。何の物音もなかった。そして息をつく間も無く、目の下へ駆けてきた。私が眺めたのは、ジャージを着た男たちの、規則正しいランニングの姿だった。