同期会
「わたし、ずっと待っていたの。でも何時までも待っても返事くれないから、振られたんだと思った。あれだけ虐めていた相手から急に告白されても、いい返事なんか出来ないと判ったの」
「高校は何処行ったの?」
「向陽学園よバスケ入学」
向陽学園はバスケでは有名な学校で全国大会でも優勝している。
「二年生の時からレギュラーになって優勝は出来なかったけど全国大会でベスト四まで行ったのが思い出かな」
「その後は?」
「立志館という大学が呼んでくれたからお世話になったわ。大学でもそこそこやれたかな」
「凄いね。俺は地元の高校から東京の大学に行き、電気関係の会社に就職して今に至ってるよ」
「大学卒業してからね。アメリカに渡った友達から、アメリカでバスケに詳しい人を欲しがってる。って言うので昨年までアメリカに居たの」
「そりゃ凄いね。じゃあ英語もペラペラなんだね」
「まあ、それはね。出来ないと仕事にならないから」
「具体的には何をやっていたの」
「WNBA関係の仕事」
WNBAとはアメリカの女子のプロバスケットボールリーグのことで、こちらも大変な人気がある。
「凄い!」
「選手じゃないしね。マネージング関係の仕事。お金じゃなく体調管理の方ね。選手としては大学の最終戦で膝をやってしまったからね。でも三十を前にして考えたの。人生の伴侶も居なくて仕事ばかりじゃね」
「それで日本に戻って来たのかい」
「そう、二十歳の時はバスケの試合と重なって一次会は行けなかったから二次会から参加したのでも早瀬君は帰ってしまったと聴いてガッカリしたんだ」
「それは悪かった。あの日は体調不良で熱もあったから早々に帰ったんだ」
「そうかぁ。二十五の時は私がアメリカだったしね」
「実は俺も海外に居た」
「何処?」
「マレーシア。発電所を作っていたんだ。技術者として参加していたんだ」
「電気関係ってそっちだったのね」
お互いコーヒーを飲みながら自分の半生を語る。おかしなものだと思う。
「で結婚は?」
「してないし、未だに彼女は出来ません。これ俺の中では『佳子の呪い』としてるんだけど」
「じゃあ、その呪い解いてあげる」
「じゃあ、あの時の返事をちゃんとするよ」
俺の言葉に佳子の瞳が輝いた
「相田佳子さん。僕と結婚を前提にしたお付き合いをさせてください!」
「どうしようかな〜」
「え?」
「嘘!ウソよ! 不束者ですが、こちらこそ宜しくお願い致します」
そう言ってにこやかに笑った顔は光り輝いて見えた。
<了>