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三枝はうつむいて涙を手で拭った。
美那子はすべてを感じ取った。
娘としてこれほどの成長を見せられて三枝は嬉しくないわけがなかった。

「お母さんには今日のことを全部話して欲しい。そのうえでお母さんの判断に任せると伝えて欲しい」

「自分で直接付き合いたいとは言いたくないのですか？」

美那子は解っていてあえてそう聞いた。

「そうじゃないんだ。美樹さんと美那子ちゃんの関係を壊したくないから、気持ちだけ伝えてくれればそれでいいんだよ」

「三枝さん、何度も言いますが母が好きならそして、母も好きなら遠慮なんてする必要はないと思います。私もお兄ちゃんのことが好きです。世間では禁断の関係とか言われますが、自分では禁断とは思っていません。心の思いのままの判断で仲良くしています。兄もそうしてくれています」

「ええ？兄妹で愛し合っているという事なのか？子供が出来たりしたら大変だぞ」

「セックスはしていません。そしてお互いに求めることはしないと約束しています」

女子高生の口からセックスという言葉が出て、それも自分の娘から言われたから驚いた。
三枝は兄の秀一郎と妹の美那子は父親が違うという理由で惹きあう何か因子みたいなものがあるのかも知れないと感じた。
母親の美樹の淫乱な因子だけが兄妹に共通しているとしたらそれは不幸だ。

美那子は家に帰ると真っ先に兄の部屋へ行き、三枝との話を伝えた。
「やっぱり」とつぶやいた秀一郎は、母親の寂しさは父親に原因があると直感した。
多少は大人としての考え方が出来るようになっていた。

「おれは息子だから母親の不倫は認めたくないよ。だから止めるように話す。美那子は知らないことにしてくれ。もちろん三枝さんから聞いた話もだ」

「ええ？お母さんが可哀想じゃない？」

「離婚するようなことになってもいいと思っているのか、美那子は？」

「だから、そうしないように約束して仲良くすればいいじゃない」

「じゃあ、おれがそうしてもいいと言うのか？美那子にバレなければ他の女子と仲良くしてもいいと思うのか？」

「お母さんはお父さんがもう好きじゃなくなっているのよ。お父さんは知らないけど。私とお兄ちゃんとの関係とは違うよ」

美那子の指摘はもっともだろう。ふと旅行で知り合った美幸のことが頭をよぎった。